日本大百科全書(ニッポニカ) 「クリプトコックス症」の意味・わかりやすい解説
クリプトコックス症
くりぷとこっくすしょう
cryptococcosis
真菌の一種であるクリプトコックス・ネオフォルマンスCryptococcus neoformans(フィロバシデエラ・ネオフォルマンスFilobasidiella neoformans)によって引き起こされる亜急性ないし慢性の疾患。原因となるクリプトコックス・ネオフォルマンスは広く世界中に存在するため、この病気は広い地域に流行がある。
通常、飛沫(ひまつ)感染により肺臓に吸入、呼吸器部位に病巣が形成される。一過性の経過をたどることが多いが、ときとして、肺臓からこの酵母が血行性に運ばれ、全身感染に進行する場合がある。なかでも、髄膜や脳実質など中枢神経系の部位に感染、この病原体が繁殖し、髄膜炎となることが多く知られている。また、皮膚や粘膜の傷口などより感染がみられ、この場合は皮膚や筋肉に限局的な病巣をつくることがある。エイズ(AIDS)、白血病や悪性リンパ腫(しゅ)など先行疾患があり、細胞性免疫が低下した場合、二次的クリプトコックス症とよばれる症状となる。これは急激な全身性感染症で致死的なことが多い。
[曽根田正己]
『池本秀雄監修『目で見る深在性真菌症』(1993・メディカルレビュー社)』