改訂新版 世界大百科事典 「クロイガー」の意味・わかりやすい解説
クロイガー
Ivar Kreuger
生没年:1880-1932
〈マッチ王〉として有名なスウェーデンの国際的金融資本家。スウェーデン南部のカルマルに生まれ,ストックホルムの王立工科大学を卒業後,アメリカや南アフリカなどで土木技師として働き,1907年に帰国して事業を始めた。その後,国内のマッチ会社を結合して17年にスウェーデン・マッチ社を設立した。第1次大戦後,戦後インフレに苦しんでいたドイツやフランスなど15ヵ国に,アメリカとイギリスの金融市場で調達した資金を貸し付け,見返りとしてそれらの国におけるマッチの専売権を獲得していった結果,43ヵ国に250の工場を所有し,世界のマッチ生産の半分以上を支配する国際的マッチ・トラストに発展した。このトラストは,持株金融会社クロイガー・アンド・トル社(1908年に彼が設立)を頂点とし,一連の持株会社の複雑な組合せからなっていた。日本でも大正末期に多くのマッチ会社が買収された。29年に始まった世界恐慌によって金融的破滅に陥り,32年パリで自殺した。死後,彼が架空のマッチ利権を担保にして借金し,イタリア政府債を偽造し,ドイツ政府債を二重抵当に入れていたという事実が判明した。
執筆者:新宅 純二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報