担保
たんぽ
広義には、将来他人に不利益を与えないことを請け合い、万一不利益が生じた場合にはその補いをつけること、またはその補いとなるもの一般をさす。しかし普通は、とくに債務が履行されない場合に備えて当事者間に設定されるものをいう。すなわち、債務者(たとえば金銭の借主)が金銭を返済しない場合に備えて、債権者(貸主)がその弁済を確保するためにあらかじめ講じる手段を担保という。これには物的担保と人的担保がある。物的担保とは、債務者または第三者の提供する物について、債権者がその価値を把握する(債務者が弁済しないときにこれを換価するなど)ことによって、あるいは、その利用を把握する(債務者にそれを利用させないなど)ことによって、自己の債権の弁済を確保しようとするものである。民法には留置権、先取(さきどり)特権、質権、抵当権の4種の担保のための物権が定められており、そのほか特別法上の各種の担保制度がある。
また、譲渡担保、所有権留保などの方法が担保の手段として用いられることも多い。人的担保は、狭い意味においては、債務者の総財産だけでなく、債務者以外の者の総財産をも債務の引き当てとすることによって、債務者が無資力になっても弁済が得られるようにしておく担保の方法(保証人をたてることがこれにあたる)である。今日では、連帯債務などのように多数当事者の債務も人的担保の機能を果たすものであることから、これらも含めて人的担保ということが多い。なお相殺の予約が担保としての機能を果たすことがある。
[高橋康之]
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たん‐ぽ【担保】
〘名〙
① 将来、他人に与えるかもしれない不利益の補いとなるもの。また、その補いをつけること。しちぐさ。
抵当。ひきあて。かた。
※縮図(1941)〈徳田秋声〉裏木戸「本物は担保に取った大場の手元にあるのは兎に角として」
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉三「又六人の
重臣をして、薄査
(バッチャー)の担保
(タンぽ)(〈注〉ウケニン)たらしめ」
③ 債務の不履行に備えてあらかじめ債権者に提供され、債務の弁済を確保する手段となるもの。物的担保と人的担保に
大別される。〔民法(明治二九年)(1896)〕
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担保
たんぽ
security
将来生じるかもしれない不利益にそなえ,あらかじめ補填の準備をすること,またはすでに生じた不利益についての補填をすること。前者の例は,将来の債務不履行の危険にそなえてあらかじめ履行を確保しておく,たとえば,保証人による保証,抵当権などの担保権の設定による担保などの債権の担保や,将来Aがこうむるおそれのある損害をBが負担することをA,Bで約束する損害担保契約 (たとえば身元保証契約) などである。また後者の例は,売主などが給付した目的物に瑕疵 (かし) があった場合に負う担保責任などである。
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担保【たんぽ】
広くは将来生ずるかもしれない不利益に備えてその補いとなるもの,また現在・過去の不利益の補いをつけること。しかし普通は特に債務不履行に備えるものをさす。すなわち債権者が満足を受け得ないことを考えて,あらかじめその債権の弁済を確保するために講ぜられる方法をいう。この意味での担保は,人的担保(債務者以外の者の一般財産による担保,保証など)と物的担保(特定の財産による担保,質権,抵当権など)とに大別。→担保物権/担保責任/保証人
→関連項目譲渡担保|責任(法律)|代物弁済
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たん‐ぽ【担保】
[名](スル)
1 将来生じるかもしれない不利益に対して、それを補うことを保証すること、または保証するもの。抵当。「土地を担保に入れる」
2 債務者が債務を履行しない場合に備えて債権者に提供され、債権の弁済を確保する手段となるもの。物的担保と人的担保とがある。
3 (特に、物品などの形を取らないで)その事を保証するもの。「消費者保護実現の担保はない」「法律によって担保する」
[類語]抵当・質・形
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担保
債務者がその債務を履行しない場合に債務の保証として債権者に提供する手段。抵当権・質権などの物的担保と、保証債務・連帯債務などの人的担保がある。
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たんぽ【担保 security】
最も広い意味では,将来生じうる損害に対し一定の塡補をすること,またはそのためのものをいう(例えば,売主の担保責任,損害担保契約などというとき)。しかし通常はとくに,特定の債権につき債務不履行に備えてその経済的価値を確保すること,またはそのための手段をさす。以下ではこの後者の意味における担保,つまり債権担保の法制度につき略説する。 一般に債務者が任意に債務を履行しないときは,債権者はその債権に基づき債務者の一般財産に対し執行(これには,個別執行たる民事執行手続と総括的執行たる破産手続とがある)をして債権の弁済にあてる。
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世界大百科事典内の担保の言及
【質】より
…質取主は質物を保全する義務を負い,債務不履行の場合には一定の条件のもとに売却し,その代価をもって債務の弁済に充てる売却質を原則としたが,債権者に帰属する流質の慣行もあった。
[中世]
売買・貸借などの取引における担保・抵当を質といった。貸借において担保を必要としたことはいうまでもないが,中世には売買にも担保を必要とした。…
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