改訂新版 世界大百科事典 「グラタン議会」の意味・わかりやすい解説
グラタン議会 (グラタンぎかい)
Grattan's Parliament
1782年から1800年まで続いたアイルランドの議会で,イギリス国王の下で,イギリス議会から独立して立法権を行使した。立法権の独立を確保する上で貢献したアングロ・アイリッシュの議員グラタンHenry Grattan(1746-1820)をたたえて,こう呼ばれるようになった。アメリカ独立革命の勃発によって,アイルランド経済は困難な事態に陥り,イギリスの貿易規制の撤廃など,しだいに自主性の獲得を目ざす動きが活発化した。1782年グラタンは権利の宣言を議会に提出,両院は満場一致でこれを承認した。こうした動きに対応して,イギリス議会も1720年以来イギリス議会の優位を規定していた宣言法を廃止し,アイルランド議会独自の開催権を否定していたポイニングズ法を根本的に修正した。グラタン議会においては,カトリック救済法が次々に採択され,被選挙権は否決されたものの,カトリックの土地取得権,教職,官吏・軍人職への就任などが認められた。また,アイルランド銀行やダブリン商工会議所の開設,貿易についての優遇措置などの政策がとられ,議会の指導の下に経済活動も活発化した。しかし,1800年アイルランドはイギリスに合併され,グラタン議会は消滅した。
執筆者:上野 格
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報