実質的意味においては、統治権の作用として法規を定立する権能をいい、形式的意味では、議会の行う権能、とくに法律を制定する権能をさす。立法権、行政権、司法権をそれぞれ三つの国家機関に分属させ、その際、立法権を国民の代表機関である議会に与えるのは、近代国家がもつ共通の特色である。
わが国の場合、明治憲法の下では、天皇が帝国議会の協賛を得て立法権を行使するたてまえになっており、法律は議会の議決を経たあと天皇の裁可によって成立するとされた。しかも緊急勅令とか独立命令など、行政機関による立法が広く認められていた。これに対し、日本国憲法は、国会を「国の唯一の立法機関」と定めて(41条)、国会以外の機関による実質的立法を否認すると同時に、国会によって立法が完結することにした。立法国会中心主義、国会単独立法主義といわれる。ただ憲法自身が、権力分立による抑制・均衡の見地から、若干の例外を認めており、各議院の規則制定権(58条2項)、最高裁判所の規則制定権(77条1項)、内閣の政令制定権(73条6号)、地方公共団体の条例制定権(94条)がそれである。しかしいずれの場合も、法律に反することを定めることはできない。
[池田政章]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…〈権利の保障が確保されず,権力の分立が定められていない社会は,憲法を有しない〉(1789年フランス人権宣言16条)といわれるように,権力分立は,権力の濫用を防ぎ権利保障を確保するものとして,近代的・立憲的意味の憲法の不可欠な内容をなすものとされてきている。 もともと権力分立は,君主権力の恣意的な支配に対抗して,立法権,少なくともその主要な部分を議会がにぎり,また,独立した裁判所によって司法権が行使されるべきことを主張するものとして登場してきた。それゆえ,近代憲法のもとでの権力分立は,議会による立法権の掌握と,議会制定法による行政・司法両権の拘束を核心とする,多かれ少なかれ議会優位型の形態をとっていた(立法国家)が,その後,現代においては,さまざまの変容をこうむるようになっている。…
…大日本帝国憲法における議会(帝国議会)の位置は天皇主権(1条)で枠づけられ,西欧近代議会のように,国民の意思が国政を決定するための手段としての機関ではなく,天皇の統治機関として定められた。立法権は天皇にあり,〈法律〉という重要な国法形式について,議会は天皇の必要的諮問機関のようなものであった。〈法律〉以外の立法は議会の関与するところではなかった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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