改訂新版 世界大百科事典 「ケノレステス」の意味・わかりやすい解説
ケノレステス
caenolestes
有袋目ケノレステス科Caenolestidaeに属する哺乳類の総称。エクアドルケノレステスCaenolestes fuliginosusなど3属7種を含む。茶色みを帯びた灰色の柔らかな毛に覆われた姿が小さなドブネズミに似ている。鼻先はトガリネズミのようにとがり,尾は根もとが太くまばらに毛が生えるのが特徴。体色は灰色ないし茶色,尾は暗茶色。下あごの門歯は長く前方に突出する。手足には5本の指がある。育児囊はなく腹面に4個の乳頭をもつ。体長11~13.5cm,尾長11.5~12.5cm。ベネズエラ南部からエクアドル,コロンビアにかけての,アンデス山脈に沿った湿潤な森林に生息する。おもに夜間,地上で活動し,ときに木にも登って昆虫その他の小動物,鳥,鳥の卵などを食べるといわれているが,生活の詳細は知られていない。第三紀の後期に栄えた原始的な有袋類の生き残りであり,かつてクスクスなどの植物食の有袋類(二門歯類)と,フクロネコなどの動物食の有袋類(多門歯類)の共通の祖先と考えられたことがある。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報