日本大百科全書(ニッポニカ) 「フクロネコ」の意味・わかりやすい解説
フクロネコ
ふくろねこ / 袋猫
common dasyure
viverrine native cat
[学] Dasyurus quoll
哺乳(ほにゅう)綱有袋目フクロネコ科の動物。オーストラリアとタスマニア島に分布する。頭胴長36~44センチメートル、尾長21~31センチメートル、体重0.7~1.1キログラム。外形はテンに似て四肢は短く、毛は長くて柔らかい。体上面は薄いオリーブ色を帯びたベージュ色に多くの白斑(はくはん)があり、下面は薄い灰色または白色である。尾には白斑はなく、先端は白色。後足の第1指を欠き、前後足ともつめは大きく鋭い。育児嚢(のう)は子を育てるときにのみ発達するが、比較的浅い。乳頭は普通6個で、ときに8個ある。主として地上生であるが、木登りもうまい。森林をおもな生息地とするが、環境に対する適応力が強く、人家の近くにも生息できる。夜行性で、昼間は木の洞や岩の割れ目に枯れ草や樹皮でつくった巣で休息する。ネズミなどの小哺乳類、鳥類、トカゲ、大きな昆虫類などを食べる。妊娠期間8~14日で、4~7頭の子を出産し、子は育児嚢で育てられる。以前は都市近郊でもよくみられたが現在ではまれで、オーストラリアでは絶滅に瀕(ひん)しているのではないかと思われる。飼育すると人によくなれる。寿命は4~5年である。
オーストラリア北部には、頭胴長27~30センチメートルと小形の近縁種であるヒメフクロネコが分布する。
[中里竜二]