改訂新版 世界大百科事典 「ゲマルジカ」の意味・わかりやすい解説
ゲマルジカ
guemal
Hippocamelus bisulcus
偶蹄目シカ科の哺乳類。チリゲマルジカともいう。チリ南部のアンデスとパタゴニアに分布する中型のシカ。雄がY字形に二つの枝に分かれた角をもち,雌雄とも上あごに大きく鋭い犬歯をもつのが特徴。枝角は前方にのびる枝のほうが短い。雌には角はない。体長115~160cm,尾長10~15cm。体色は灰色がかった黄褐色。標高3300~5000mの地に,雌が率いる8頭くらいまでの小さな群れをつくってすむ。夏を高地の草原で過ごし,冬は谷間の森林に入る。ふつう夜間活動するが,昼間も姿を見ることがある。交尾期は6~8月,雌は1~3月に1子を生む。飼育下での寿命は10年。家畜との競合と狩猟のため近年著しく個体数が減少している。よく似た種に,ペルー,エクアドル,ボリビア,アルゼンチン北部の山地にすむやや小型のペルーゲマルジカH.antisensisがある。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報