パタゴニア(英語表記)Patagonia

翻訳|Patagonia

デジタル大辞泉 「パタゴニア」の意味・読み・例文・類語

パタゴニア(Patagonia)

南アメリカ大陸南部の地域。主にアルゼンチン領のコロラド川から南をいう。氷河期にできた盆地・湖が点在。石油を産する。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「パタゴニア」の意味・読み・例文・類語

パタゴニア

  1. ( Patagonia ) 南アメリカ、アルゼンチン南部の地方。北はコロラド川、西はアンデス山脈、南はマゼラン海峡に囲まれた台地で、石油・天然ガスを産し、牧羊が行なわれる。広義にはチリ南部を含めた南アメリカ大陸南部をいう。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「パタゴニア」の意味・わかりやすい解説

パタゴニア
Patagonia

南アメリカ大陸の南緯39°以南,コロラド川あるいはネグロ川以南のくさび形をした地域の総称。チリ領とアルゼンチン領とに分かれるが,通常狭義にそのアルゼンチン領のみの呼称として用いられる場合が多い。語源については2説ある。一説に1520年当地に到着したF.マゼラン一行が原住民の足跡を見て命名したとする〈大きな足〉の意,他説に原住民の用語で〈荒い海岸〉の意とされる。

 パタゴニアの地形は大きく二つに分けられる。太平洋岸沿いに細長くのびるアンデス山脈とその東側にあって大西洋岸まで続く200~1000mのパタゴニア台地である。パタゴニア・アンデスはそれ以北のアンデスと異なり,幅も100km以下,標高も3000~1000mとなっている。山脈は古生層,中生層およびそれを貫く深成岩,第三紀以降の火山岩などから成る。山脈の東側には稼行中の油田,ガス田もあり,豊かな埋蔵量が推定されている。パタゴニア・アンデスの中部にはパタゴニア北陸氷,南陸氷と呼ばれる大きな氷帽氷河が現在でも見られるが,第四紀の氷期には山脈全体を覆いつくすほどに拡大していた。そのときの氷河の浸食作用でパタゴニア・アンデスを代表するようなフィッツ・ロイ山,パイネ山などの尖峰が形成された。また太平洋岸は湾入の多いフィヨルド海岸となり,東側には多くの湖が残された。

 この地域は偏西風気候帯に属し,太平洋側は一年中多雨で冷涼である。広葉樹林に覆われている。一方,風下側にあたる東側はパタゴニア台地も含めて,きわめて少雨,冷涼なため森林は成立せず,まばらな低木と草地になっている。アルゼンチンでは播種・耕作を行わない放牧地のあるところとしてパタゴニアを認知しているようである。
執筆者: アルゼンチン領のパタゴニアはリオ・ネグロ,ネウケン,チュブト,サンタ・クルスの4州とティエラ・デル・フエゴ準州から成る。面積は約80万km2でアルゼンチン国土の30%弱,他方,人口は約170万(1995)で同国全人口のわずか4.9%である。

 マゼラン一行の航行後,若干のヨーロッパ人による探検が試みられたのみで入植は進まず,17世紀イエズス会宣教師の布教・定住の試みも挫折した。しかし18世紀後半に入り南大西洋での漁業,捕鯨業が盛んになり航行基地として重視されるに至り,1830年代には塩漬肉製造に必要な塩の供給地となった。80年代半ばの原住民掃討戦終結後,ヨーロッパ人,チリ人の入植が進展し,やせた土壌のステップが続くパタゴニア台地で牧羊業,またネグロ川流域で果実栽培,集約的農業が開発されていった。またチリとの国境紛争が深まるなかで交通網の整備が緊要となり,90年代にバイア・ブランカとコロラド川間,さらにネウケンとが鉄道で結ばれた。

 羊毛に加えて1880年代以降の冷凍船実用化により冷凍羊肉の輸出が促され,牧羊業を中心に経済開発が進んだ。1907年にはコモドロ・リバダビア市付近で油田が発見され,22年同市に国営石油会社が創設された。パタゴニア地方は石油に加えて天然ガスの埋蔵も豊富で,ともに国産量の過半を産する。大陸南端のリオ・ガエゴスからコモドロ・リバダビアを経てブエノス・アイレスに至るガス・パイプラインが通っている。またサンタ・クルス州リオ・トゥルビオ一帯の石炭鉱脈,水量豊かな未開発の河川をもち,鉱物資源,水力発電などの大型開発計画が実施されている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パタゴニア」の意味・わかりやすい解説

パタゴニア
ぱたごにあ
Patagonia

南アメリカ南部、コロラド川以南の地域の総称。チリ領とアルゼンチン領に分かれ、狭義にはアルゼンチン領のみの呼称として用いられる。地形はアンデス山脈とパタゴニア台地からなる。語源は、1520年この地方を探検したマジェラン一行が先住民の足跡を見て命名したとする「大きな足」の意で、ほかに先住民のことばで「荒い海岸」の意の説がある。狭義のパタゴニアはリオ・ネグロ、ネウケン、チュブート、サンタ・クルス4州とティエラ・デル・フエゴ准州からなる。面積は80万5500平方キロメートルで国土の30%弱を占めるが、人口は148万2002(1991)で全人口のわずか4.5%である。

 パタゴニア台地は標高300~1000メートルで、東側は中生代の三畳紀、ジュラ紀の沖積地層からなり、石油鉱脈を有する。パタゴニア台地とアンデス山脈との境は狭い低地帯で、第四紀大氷河期の侵食作用でできた盆地、湖が点在し、アルゼンチン湖水地方などの国立公園がある。パタゴニア台地の大半は寒冷な乾燥気候で、年平均気温は12℃以下、年降水量300ミリメートル以下である。他方アンデス山脈地帯では降水量が増加、南緯39度から42度の一帯はアルゼンチンの最多雨地域となっている。やせた土壌のステップが続くパタゴニア台地では牧羊業が、またネグロ川流域では果実栽培、集約的農業が営まれる。1907年コモドロ・リバダビアでの油田発見により石油開発が進展、パタゴニア地方は石油、天然ガスともに全国の半分以上を産する。

 マジェランらによる探検後もヨーロッパ人の入植は進まず、17世紀にはイエズス会宣教師の定住の試みが挫折(ざせつ)し、18世紀にようやくネグロ川河口に定住地ができた。1880年代なかばの先住民掃討戦の終結後、ヨーロッパ人、チリ人の入植が盛んになった。近年、鉱物資源、水力発電などの大型開発計画が実施されている。

[今井圭子]

『松井覺進著『パタゴニア自然紀行――氷河調査隊同行記』(1985・朝日新聞社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パタゴニア」の意味・わかりやすい解説

パタゴニア
Patagonia

南アメリカ南部,南緯 39°付近を東流するコロラド川より南の地域をさす。本来はチリ,アルゼンチン両国にわたるが,一般にはアンデス山脈以東のアルゼンチン領のみをさし,北からネウケン,リオネグロ,チュブト,サンタクルスの4州から成り,面積約 70万 km2。さらにその南のフエゴ島 (ティエラデルフエゴ准州) を含める場合もある。大部分が草と低木の疎林におおわれた砂漠状の台地で,アンデスから東に向って段丘状に低くなり,東縁で急崖をなして大西洋にのぞむ。この台地に深く刻まれた東西方向の谷はアンデスから流下したかつての川の河床であるが,現在も年間を通して水が流れているのはコロラド,ネグロ,チュブトなどごくわずかな川だけである。偏西風帯にあたり太平洋から湿気を帯びた西風が吹きつけるが,水分はアンデスを越えるまでに失われ,アルゼンチン領に達したときは乾いた風になっているため,この地域は年降水量 500mm以下の乾燥地帯となっており,200mm以下のところも多い。月平均気温は北部で 12~20℃,南部では6~13℃。先住民はフエゴ諸島からやってきたインディオと考えられ,16世紀スペイン人がこの地域を探検したときにはグアナコ (野生のラマ) やレア (アメリカダチョウ) などを狩猟して生活していたが,現在はほとんど残っていない。 16世紀末から 19世紀初めにかけてスペイン人やイギリス人がしばしば入植を試みたが,いずれも不成功。その後,独立したアルゼンチンが入植を進めたが,大量の移住者をみるにいたらず,国土の4分の1以上を占めるこの地域に総人口の3%強が住んでいるにすぎない。主産業は牧羊と石油採取で,中部沿岸のコモドロリバダビア周辺には同国最大の油田がある。また北部には大規模な鉄鉱床があり,ほかにマンガン,タングステン,鉛,銅,ウランなどの鉱物資源に恵まれる。農業は灌漑地帯でわずかに行われる程度。アンデス東麓に連なる湖沼地帯にはナウエルワピ,ロスグラシアレスなどの国立公園があり,近年観光業が発展してきている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「パタゴニア」の意味・わかりやすい解説

パタゴニア

南米大陸南端,ほぼ南緯40°以南の地方。アンデス山脈東麓の東パタゴニア(アルゼンチン領)は半砂漠の台地できわめて乾燥,20世紀初め,油田が発見され,天然ガス,石炭,水力の開発も進んでいる。牧羊が行われる。西パタゴニア(チリ領)は多雨で,多島海をもち氷陸地帯が広がる。両国とも多くの国立公園を設定し,氷河見物,登山,アウト・ドア活動などを中心に観光産業の振興を図っている。アルゼンチン領のバルデス半島一帯は海洋哺乳類繁殖場として1999年世界自然遺産に登録された。
→関連項目アルゼンチンプエルト・モントロス・グラシアレス

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のパタゴニアの言及

【チリ】より

…この部分はアンデス山脈も2000m以下となるが,氷河でおおわれ,U字谷が形成され,フィヨルドが複雑な海岸線をつくっている。 このような地形的な相違に加え,南北では気候上の差も顕著で,北の国境からコキンボ(南緯30゜)までの北部,その南からビオビオ川(南緯37゜)までの中央部と,その南の南部およびパタゴニアに分けることができる。北部はきわめて乾燥しており,アタカマ砂漠,タラパカTarapacá砂漠がある。…

※「パタゴニア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android