日本大百科全書(ニッポニカ) 「こき色」の意味・わかりやすい解説
こき色
こきいろ / 濃色
天然染料は化学染料と比べると、色を出すための材料となる自然物の数が限られているので、その色数もそれほど多いとはいえない。そのかわり、一つの色の濃淡の変化が非常に微妙で美しく、したがって、古くから、たとえば深緋(こきあけ)、浅紫(うすむらさき)、浅縹(うすはなだ)といったような色の深浅、濃淡を付した色名が非常に多い。
こき色というと、一般的にいえば、何色であれ濃く出した色ということになるわけだが、有職(ゆうそく)の色目でいう「こきいろ」は、とくに紫の濃い色という意味に用いられている。染め色では、濃い紫に、ときとして赤みの加わった、蘇芳(すおう)または葡萄(えび)に近い色、織り色では経緯(たてよこ)ともに濃い紫で織り出した色をいう。染料は紫根および蘇芳、これに附子鉄漿(ぶしかね)を加えて色を出したといわれる。平安時代以来若年未婚の高貴な女性の用いた袴(はかま)がこの色である。
[山辺知行]