改訂新版 世界大百科事典 「コンクリートアート」の意味・わかりやすい解説
コンクリート・アート
concrete art
具体芸術と訳す。1930年,そのころすでにあいまいになっていた抽象芸術という概念に対してファン・ドゥースブルフが提案した言葉。芸術作品は自然形態の模倣再現ではなく,人間の創造物であり,一本の線,一つの色彩,一枚の平面ほど具体的でリアルなものはないという彼の主張は,アルプらの共鳴も得たが,この言葉が一つの流派を指すようになったのは,第2次大戦後のスイスにおいてである。44年バーゼルでコンクリート・アート展が開かれ,チューリヒでは《抽象/具体》誌が創刊された。これら一連の活動の中心人物ビルMax Bill(1908-94)によれば,コンクリート・アートとは抽象的な概念,関係,思考そのものを目に見えるようにした作品のことで,彼およびこの派に属するR.P.ローゼ,K.ゲルストナーらは,数学的でシステマティックな方法で制作している。またこの方法はスイスのグラフィック・デザインにも一時影響を与えた。
執筆者:宮島 久雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報