精選版 日本国語大辞典 「共鳴」の意味・読み・例文・類語
きょう‐めい【共鳴】
とも‐なり【共鳴】
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〔1〕振動体がその固有振動数に近い周期性をもった外力を受けたとき、振動を始める現象。たとえば、二つの音叉(おんさ)を多少離して置き、一方を振動させると、他方も振動を始めることがある。これは、二つの音叉の固有振動数が相当違っている場合にはおきず、固有振動数が近づくにつれておこるようになり、正確に等しい固有振動数になったときもっとも激しい。共鳴は音波、光波、電気振動や一般の機械的振動において認められる。共振ともいう。
〔2〕光と物質の間におこる共鳴 物質内のエネルギー準位の差が、入射する光の波長と一致したときに生ずる。この共鳴は吸収スペクトルとして観測され、吸収の位置、強度の測定から物質の構造や性質を知る手掛りを与える。
〔3〕分子構造における共鳴 ある物質の分子構造が一つの結合構造だけでは表現できず、いくつかの結合構造の重ね合わせとして理解される場合、その分子はこれら複数の結合構造の間を共鳴しているといい、共鳴にあずかる個々の結合構造を極限構造式とよぶ。
〔3〕の共鳴を量子力学的にみれば、実際の分子構造を表す固有関数Ψ(プサイ)は、可能なすべての極限構造式に対応する波動関数ψ1、ψ2、ψ3、……の線型結合で示される。Ψ=c1ψ1+c2ψ2+c3ψ3+……。ここでc1、c2、c3、……は、対応するψ1などの状態の出現する度合いを示す係数である。たとえばベンゼン分子は、6個の炭素が正六角形をした構造(Ψ)である。また炭素間の結合距離は等しく139ピコメートルである。炭素の原子価が4価であることから、ベンゼンの構造を書くと
の(1)・(2)が考えられる。炭素間の結合距離は単結合では154ピコメートル、二重結合では139ピコメートルであるから、(1)の構造では正六角形にならない。しかし、(1)と(2)とを重ね合わせると、炭素間の結合は単結合と二重結合との平均値となり、いちおう正六角形にはなる。しかし、実際の結合距離は139ピコメートルであり、単純な平均値ではない。イギリスのデュワーは、炭素間の二重結合はかならずしも隣接する炭素間にのみ存在しなくともよいと考え、 の(3)・(4)・(5)のような極限構造を考えた。この状態を考慮すれば、ベンゼンの固有関数Ψは次のようになる。 Ψ=c1ψ1+c2ψ2+c3ψ3+c4ψ4+c5ψ5
この関係式を用いると、ベンゼンの炭素間の結合次数は1.33となり、実測された炭素間の結合距離がよく説明できる。 の(1)・(2)の極限構造式をケクレの構造式とよぶ。
このように共役二重結合をもつ分子には化学的共鳴がおこるが、このほかにアリルラジカルや有機脂肪酸も共鳴構造が必要である。
これまでの例にみるように、共鳴のおこる構造は、互いに原子配置はまったく、あるいはほとんど変わっていない。古典的な表現では異なる構造になっている異性体間で、原子の並び方だけが異なっているような構造の間で共鳴がおこるのである。このような異性体を電子異性体という。
実際の分子のもつ位置エネルギーは最低であるから、極限構造式のもつエネルギーは高い。その差を共鳴エネルギーという。共鳴エネルギーは、共鳴した結果その分子が安定化した度合いを示すので、安定化エネルギーともいう。
共鳴は有機電子論の基本的な概念の一つで、分子の構造ばかりでなく、反応性、酸・塩基性などの性質を合理的に説明するのに役だっている。
[下沢 隆]
分子の構造が共鳴のため一つの構造式では表現できない場合の分子構造をいう。すでに述べたように
の(1)~(5)はいずれもベンゼンの構造式であり、互いに共鳴しているので、これらの構造を共鳴構造式という。 の(6)の表現がベンゼンの二重結合が6個の炭素原子のどれにも局在していないことを示す構造式である。分子の中での原子配置は構造式によって示される。その際、分子がある定まった立体配座をもっており、結合が局在化した電子によって形成されていれば、一つの構造式でその分子をモデル化できる。化学結合は一般に電子雲の重なり、あるいは電子のやりとりによって生じている。その電子がある原子間に局在せず隣接する結合を通って移動ができる場合には、電子の局在した結合の表示を幾通りも用意しなければならない。このように電子が動いて非局在化している状態があるとき、分子に共鳴があるといい、それに対応する分子の構造を共鳴構造という。
[下沢 隆]
『大木道則著『化学』(1975・丸善)』▽『米沢真次郎他著『量子化学入門 上』(1970・化学同人)』
振動する物体の固有振動数に等しい振動数で外部から力を加えると,その物体は大きく振動する.これを共鳴という.原子や分子による電磁波の吸収や放出も同じように,電磁波の振動数νが原子や分子の量子状態のエネルギー準位の差
(ΔE = hν)
に相当するときに強い吸収や放出が起こる.これらを共鳴吸収,共鳴放出(resonance emission)という.光の吸収・放出のほか,電子スピン共鳴,核磁気共鳴などはいずれもこれに属する.また,分子の結合様式が一つの構造式では表現できず,二つ以上の構造式の重ね合わせによってのみ説明されるときに,分子はこれらの構造式の間に共鳴しているという.たとえば,ベンゼンは,6個の炭素-炭素原子間の距離は0.1397 nm で,正六角形の構造をとっている.この結合距離は,エタンの炭素-炭素原子間の単結合の距離(0.154 nm)より小さく,エテンの二重結合の距離(0.133 nm)より大きいので,ベンゼンは図に示したようなケクレ構造式のどちらかの一つでは表されず,二つのケクレ構造式(a)と(b)の間に共鳴しているものとして説明される.この場合のケクレ構造式のように,互いに共鳴している化学構造を極限構造,または共鳴構造という.量子力学的には,分子の定常状態の波動関数Ψが極限構造に対応する波動関数 Ψa,Ψb,…の一次結合,つまり
Ψ = aΨa + bΨb + …
で表されることに対応する.これを量子力学的共鳴という.このような構造間の共鳴の概念は,L. Pauling(ポーリング)によってはじめて化学結合の研究に導入された.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
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出典 (株)トライベック・ブランド戦略研究所ブランド用語集について 情報
…振子などの振動する物体に外から周期的な力を加えるとき,その振動数が物体の固有振動数(固有振動)に近いほど外力のする仕事が有効に吸収されて物体の振動が激しくなる現象。共鳴ということもある。振動数の等しい音叉を二つ並べておき,一つを鳴らすと他の一つも鳴り始めるのはその一例である。…
…したがって両方の振動数が近い場合には,振動の振幅が非常に大きくなる。この現象は共振と呼ばれ,また,音に関する共振の現象は共鳴として古くから人の注意をひいていたことから共振のことを共鳴ということもある。素粒子の世界にも,これに似た現象が見られる。…
※「共鳴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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