日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴルジ装置」の意味・わかりやすい解説
ゴルジ装置
ごるじそうち
生物細胞内の細胞小器官の一つ。フクロウの小脳にある大形の神経細胞にあり、硝酸銀に黒染する「内網装置」として、1898年にイタリアの組織学者C・ゴルジによって初めて記載された。その後65年間にわたる論争のすえ、細胞小器官としての実在性が認められ、発見者の名を冠してゴルジ装置、ゴルジ複合体、またはゴルジ体ともよばれる。電子顕微鏡的観察によると、ゴルジ層板、ゴルジ空胞およびゴルジ小胞の3要素からなり、扁平(へんぺい)な嚢(のう)が数枚、ときには数十枚積み重なり、その周辺に小胞と空胞が付随する。ゴルジ装置の働きは次のようである。
(1)粗面小胞体(タンパク合成の場で、分泌機能をもつ細胞に多い)で合成されゴルジ装置へ転送されたタンパク成分を、濃縮して分泌顆粒(かりゅう)を形成する。
(2)分泌物のタンパク成分に糖を結合させて糖タンパクにする。
(3)細胞表面の多糖類被覆(糖衣ともよばれ、細胞膜の外側にある)を合成する。
(4)精子細胞では、精子頭部先端の細胞器官である尖体(せんたい)を形成する。
(5)リソゾーム(水解小体)を形成する。
(6)黒色素胞のメラニン顆粒を形成する。
ゴルジ装置には、外面から内面に向かってオスミウム還元性があり、オスミウムめっき法で染色されるほか、チアミンピロフォスファターゼ活性および酸性フォスファターゼ活性などもある。
[小林靖夫]