小脳(読み)しょうのう(英語表記)cerebellum

翻訳|cerebellum

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

小脳
しょうのう
cerebellum

脳の一部分。中のうしろに位置し,腹側は延髄に接する部分をいう。円口類や有尾両生類にはほとんど小脳は発達していない。鳥類,哺乳類ではよく発達していて左右の半球と虫部に分れ,さらに表層小脳皮質と,深部の小脳髄質に区分される。小脳の皮質の各部は,同側の筋肉群の筋肉運動と筋緊張を調節し,運動の調整や,体の平衡を支配している。歩いていて石につまずいたときに,無意識に体が倒れないようにするための反射経路や,居眠りのときの姿勢が自然にもとに戻ることなどは,いずれも小脳を中枢とした働きによるものである。

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知恵蔵の解説

小脳

小脳は、橋(きょう)および延髄の後面にあり、第4脳室を覆っている。全身の筋肉運動や筋緊張の調節を行う。また、姿勢や運動の制御にも関係している。起源が最も古い片葉(へんよう=古小脳)は、頭位が変われば、その位置変化の情報を受けとり、四肢、体幹の筋肉をうまく動かすことにより、身体の平衡を保つ。旧小脳は、身体各部位の皮膚感覚や筋感覚情報の入力を受けて、静止時および歩行時の体の平衡を保つことに関与する。小脳半球の大部分を占める新小脳(半月小葉)は、大脳皮質や各種感覚器からの情報の入力を受け、随意運動を起こさせ、さらにそれをうまく調節している。新たに注目されている小脳の機能は、手仕事や技の学習と記憶である。

(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)

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百科事典マイペディアの解説

小脳【しょうのう】

脊椎動物のの一部で後脳の背側部にある。成人で120〜140g,脳全体の重さの10%以上を占める。第四脳室を背上方から囲み,延髄,橋(きょう),中脳と連絡する。中央の狭い虫部と左右の小脳半球とからなり,表面には多数の溝が発達している。表層は小脳皮質と呼ばれるほぼ一定の厚さの灰白質の層からなり,また内部にも小脳核と呼ばれる数個の灰白質のかたまりがある。皮質と核との間は小脳髄質という白質でみたされ,小脳内の各部を連ねる神経繊維と,脊髄,延髄,橋などからくる神経繊維でできている。小脳は運動の調整に役立ち,からだの平衡を正しく保持し,筋肉の緊張状態を保つために必要で,そのための反射路が出入している。

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世界大百科事典 第2版の解説

しょうのう【小脳 cerebellum】

小脳は大脳と並ぶ脳の主要部分である。ヒトの小脳の重量は約130gあり,大脳の10%程度であるが,細かいしわ(皺)が多いため表面積は大脳の25%に達する。ヒトの小脳に含まれる神経細胞の総数は1010~1011個に及び,大脳のそれにほぼ匹敵している。小脳は運動中枢の一つであり,スポーツや楽器弾奏の練習など,いわゆる〈運動学習〉に重要な働きをすると考えられるが,自律神経機能の調節にも関与している(図2)。

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大辞林 第三版の解説

しょうのう【小脳】

延髄と橋きようの背面にある皺しわの多い脳髄。表層は灰白質で小脳皮質と呼ばれ、中心部は神経繊維の集まった白質。体の各部の筋運動の調節と平衡をつかさどる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

小脳
しょうのう

脊椎(せきつい)動物の脳を構成する一要素。中枢神経(脳と脊髄)のうち、内耳から平衡感覚を受け、また全身の筋、腱(けん)、関節などに存在する感覚受容器から刺激を受けて筋肉の緊張を保ち、筋肉運動の調節をつかさどる機能をもつ部分である。第四脳室前端部付近の外胚葉(がいはいよう)から発生し、第四脳室を後上方からテントのように覆っている。後脳(小脳と橋(きょう))では背側部を占め、後頭蓋窩(こうとうがいか)に収容されている。比較解剖学的にみると、運動が敏速で、かつ細かい運動をする動物の小脳は概して発達がよく、硬骨魚類、鳥類、哺乳(ほにゅう)類ではよい発育を示し、緩慢な運動をするヒキガエル、イモリなどの両生類、爬虫(はちゅう)類などでは発育が悪くて小さい。なお、ヒトの小脳の重さは、およそ130~150グラムとされる。
 ヒトの小脳は上面が多少扁平(へんぺい)で下面は突出し、左右両側は著しく膨大している。この膨大部が小脳半球で、中央部の細い部分が虫(ちゅう)部である。上面では小脳半球と虫部との境は明瞭(めいりょう)でないが、下面は虫部部分が深く陥没し、ここを小脳谷(こく)とよび、延髄部分が収まっている。小脳谷では小脳半球と虫部とは深い溝で明瞭に境ができている。下面には小脳と他の脳幹部を連絡する小脳脚(きゃく)があり、脳幹部の延髄、橋、中脳と結合している。小脳脚は上、中、下の3対の部分に分けられ、下小脳脚は脊髄、延髄からの伝導路が通り、中小脳脚は小脳と橋とを連絡しており、高等な哺乳動物では、とくに橋の発達がよいので、中小脳脚も太くて外観的にも明瞭である。上小脳脚はおもに小脳から中脳、間脳へと出ていく伝導路が通る部分である。
 小脳全表面にはほぼ平行に走る小脳溝(こう)があり、この溝の間のしわの高まりが小脳回である。小脳溝のなかにはとくに深い溝がいくつかあり、その間に多数の小脳回があり、集合して小脳葉を形成し、小脳表面を区分している。これらの小脳葉、あるいは小脳各部には名称がつけられているが、いずれもその外形によっての名称であるため、たとえば、ヒトの小脳の名称はヒトにだけしか通用しないものとなっている。脊椎動物全体として小脳をみた場合、虫部と小脳下面の片葉という部分は鳥類以下にも存在する古い系統の小脳であり、小脳半球は哺乳類になって初めて現れる新しい系統の小脳となっている。小脳表層は厚さ1ミリメートルほどの灰白質で、神経細胞が配列し、小脳皮質を形成している。小脳皮質はしわ(小脳回)を形成することによって表面積を極度に拡張している。皮質には3層の神経細胞層があり、小脳へ入る神経線維を受けるほか、小脳から中脳や間脳へ神経線維を出している。第3層の顆粒(かりゅう)細胞層は人体の組織ではもっとも細胞の分布密度が高い部分である。第2層にはプルキンエ細胞とよぶきわめて特殊な西洋ナシ状の大型細胞が1層に配列しているのが特徴である。小脳の中心部は神経線維が充満する髄質で、第四脳室に近い部位には4種類の灰白質塊、すなわち小脳核が対(つい)をなして存在し、歯状核、栓状核、球状核、室頂核とよぶ。これらの核は小脳への求心性線維やプルキンエ細胞からの線維を受け、中脳、間脳へ遠心性線維を出している。なお、室頂核は前庭神経系と関係する神経細胞群である。小脳の虫部に障害があると躯幹(くかん)の運動や姿勢保持に関係する運動障害がみられ、千鳥足のような症状が現れる。また、小脳半球に障害があると四肢の運動失調が障害側の手足にみられる。[嶋井和世]

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世界大百科事典内の小脳の言及

【運動】より

…したがってα運動ニューロンを最終共通路ともいう。この場合,α運動ニューロンの活動は大脳基底核,小脳,脳幹などの働きで調節され,それによって精妙で複雑な運動が可能となっている。一見,随意運動として合目的で円滑な運動も,その背後に比較的単純な脊髄,脳幹レベルでの反射に基づいていることがしばしばある。…

【運動障害】より

… 一方,この最終共通経路に対して中枢神経の四つのおもな系統の調節系が作用を及ぼして,随意運動や不随意な自動的運動が営まれている。それは,(1)大脳皮質運動野からの系統(錐体路系),(2)脳幹網様体などに由来する系統,(3)小脳系,(4)大脳基底核系であり,これらの病変によって種々の運動障害が生じる。
[錐体路系の運動障害]
 大脳皮質運動野にある神経細胞であるベッツ巨大錐体細胞から出た軸索は,脳幹や脊髄の運動ニューロンに達して,シナプスで連絡する。…

【脳】より

…側脳室を囲む部分を終脳(正確には,左右の大脳半球と終脳の不対部),第三脳室を囲む部分を間脳,中脳水道を囲む部分を中脳,第四脳室を囲む部分を菱脳とする。さらに菱脳の前半部(後脳)からは小脳と橋(きよう)が分化し,菱脳の後半部は延髄(髄脳)として脊髄に連続する。 成人の脊髄は身長の28~29%の長さがあるが(日本人では40~47cm),脳と脊髄の重量比は約55対1であり,中枢神経系において脳の占める割合がいかに大きいかがわかる。…

※「小脳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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