硝酸銀(読み)ショウサンギン(英語表記)silver nitrate

翻訳|silver nitrate

デジタル大辞泉 「硝酸銀」の意味・読み・例文・類語

しょうさん‐ぎん〔セウサン‐〕【硝酸銀】

銀を硝酸に溶かして得られる無色透明な板状結晶。水によく溶け、銀イオンの試薬として常用されるほか、感光乳剤製造や銀めっき医薬品などに使用。化学式AgNO3

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精選版 日本国語大辞典 「硝酸銀」の意味・読み・例文・類語

しょうさん‐ぎんセウサン‥【硝酸銀】

  1. 〘 名詞 〙 銀の硝酸塩。化学式 AgNO3 無色透明の斜方晶系結晶。劇薬。写真用臭化銀、銀メッキ、銀鏡などの製造原料として用いるほか、陶磁器着色、分析試薬、医薬品などに用いられる。
    1. [初出の実例]「消酸銀は水にも亜爾箇児にも溶解す」(出典:舎密開宗(1837‐47)内)

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改訂新版 世界大百科事典 「硝酸銀」の意味・わかりやすい解説

硝酸銀 (しょうさんぎん)
silver nitrate

化学式AgNO3。銀を濃硝酸に溶解した溶液から無色,斜方晶系の結晶として得られる。熱すると159.6℃で六方晶系となる。融点212℃,融解するとやや黄色を帯びるが,冷却固化すれば再び無色となる。比重4.35。潮解性はない。純粋であれば光に当たっても変化しないが,有機物が痕跡量でも存在すれば光還元反応を起こし銀が析出するので,通常硝酸銀固体または水溶液容器のふたのあたりは黒変している。350℃まで加熱しても安定であるが,444℃で分解し,金属銀,酸素,窒素,窒素酸化物を生ずる。水100gに対する溶解度215g(20℃),910g(100℃),水溶液は中性。ショ糖,酒石酸,紙等多くの有機物に触れると,たやすく金属に還元される。とくにガラス表面でアンモニアアルカリ性溶液において酒石酸と反応させると,美しい銀鏡を作ることができる。卵白は硝酸銀の作用で凝固する。したがって生物体に対し,腐食,刺激などの有害作用をもつ。硝酸銀溶液を皮膚につけると黒変するのも,反応により銀が析出するためである。写真工業に最も多く使われる。ほかに,鏡製作,防腐剤,分析試薬,銀化合物合成の原料とされる。古代エジプトで用いられた最も古い医薬品の一つであるが,現在では収斂しゆうれん)剤,殺菌剤として粘膜カタルなどに用いられる。劇薬(致死量10g)で,密栓,遮光して保存する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「硝酸銀」の意味・わかりやすい解説

硝酸銀
しょうさんぎん
silver nitrate

銀の硝酸塩。純銀を硝酸に溶かした溶液を蒸発すると無水和物結晶が得られる。

 92.5%のエタノールエチルアルコール)には15℃で100グラム当り3.8グラム溶け、アセトンにわずかに溶ける。無水エタノール、ベンゼンには難溶。アンモニア水にはよく溶ける。水溶液は中性。光に安定であるが、有機物に触れると還元されて銀を析出し黒色となる。酒石酸、ショ糖、アルデヒドなどにより、アンモニアアルカリ性水溶液を還元するとガラス壁などに銀鏡をつくることができる。タンパク凝固作用があり、皮膚、組織を腐食するが、このことはきわめて古くから知られており(700年ごろにつくられている)、硝酸銀棒のことをlunar causticといっている。

 写真工業での臭化銀製造の原料として広く用いられており、銀めっき、銀鏡の製造原料として用いられる。医薬品としては外用として防腐剤、収斂剤(しゅうれんざい)、化学では各種試薬として、そのほか陶磁器の着色用に用いられる。劇薬(致死量10グラム)。密栓し、遮光して保存する必要がある。

[中原勝儼]


硝酸銀(データノート)
しょうさんぎんでーたのーと

硝酸銀
  AgNO3
 式量   169.9
 融点   212℃
 沸点   ―
 比重   4.352(測定温度19℃)
 結晶系  斜方
 溶解度  215g/100g(水20℃)
 転位温度 159.6℃ →六方
 分解温度 444℃

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化学辞典 第2版 「硝酸銀」の解説

硝酸銀
ショウサンギン
silver nitrate

AgNO3(169.87).金属銀を硝酸に溶解後,溶液を蒸発すると得られる.無色の斜方晶系板状晶.密度4.35 g cm-3.159.6 ℃ 以上で六方晶系(密度4.19 g cm-3)に転移する.融点212 ℃.融点以上に加熱するとAgNO2と O2 になり,さらに440 ℃ で加熱するとAgとNO2になる.水に易溶,エタノールに微溶.有機物が共存しなければ,固体も水溶液も光に対して安定である.銀めっき材料,写真感光剤,分析試薬,殺菌剤,触媒,鏡,インキ製造,外用医薬などに用いられる.タンパク質凝固作用があり,皮膚,組織をおかす.有毒.[CAS 7761-88-8]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硝酸銀」の意味・わかりやすい解説

硝酸銀
しょうさんぎん
silver nitrate

化学式 AgNO3 。無色結晶。融点 212℃。有毒。有機物を含むと光によって徐々に黒化する。水,アルコールに可溶。写真乳剤,鏡,銀メッキ液,各種銀塩の製造,毛髪染め,陶磁器の着色,分析用試薬などに用いられるが,古代エジプトにおいてすでに用いられた最古の医薬品の1つである。その濃度に応じて腐食,消毒,殺菌,収斂の作用を示す。新生児に対する1~2%の点眼薬,その他,口内炎,歯頸部知覚過敏症などに用いられるが,その作用は表在的なものであり,組織の深部には到達しない。

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百科事典マイペディア 「硝酸銀」の意味・わかりやすい解説

硝酸銀【しょうさんぎん】

化学式はAgNO3。比重4.35,融点212℃。無色無臭,苦い味がある結晶。水,アルコールに可溶。有毒。銀塩の原料,分析試薬,銀めっき,写真の感光材料製造原料などとするほか,収斂(しゅうれん)・殺菌剤として医薬などに使用。銀を濃硝酸に溶かしてつくる。
→関連項目

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世界大百科事典(旧版)内の硝酸銀の言及

【殺菌剤】より

…水銀剤としてはオキシシアン化水銀やマーキュロクロム(メルブロミン),チメロサールなどが知られているが,使用されているのはマーキュロクロムくらいのものである。その他の重金属塩類では硝酸銀が有名である。硝酸銀は古代エジプトで殺菌剤として用いられたといわれる。…

※「硝酸銀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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