日本大百科全書(ニッポニカ) 「さざえ堂」の意味・わかりやすい解説
さざえ堂
さざえどう
サザエの殻のように螺旋(らせん)状に回りながら上り下りするようにつくられた堂。一般に正面から入ると右回りに上り、上り着いてからは左回りに下りて出口に出る。上り下りはそれぞれ階段を異にし、同じ場所を通らない。上下の通路の途中には観音(かんのん)札所を設け、この堂を上下一巡することによって、1回で観音の霊場巡りができるようにつくられている。江戸時代中期から江戸や関東・東北の各地でつくられた。三匝堂(さんそうどう)ともよばれたのは、3回巡る堂の意味で、内部が3層になる。
江戸では1741年(寛保1)に建立された本所羅漢(らかん)寺の三匝堂が有名だったが、現存していない。群馬県太田市東今泉の曹源(そうげん)寺観音堂は1793年(寛政5)に建立の方形堂、福島県会津若松市一箕(いっき)町の旧正宗寺三匝堂は1796年に建立され、六角堂として有名。青森県弘前(ひろさき)市西茂森の蘭庭(らんてい)院さざえ堂は1839年(天保10)建立で八角堂であり、それぞれ特有の外観をみせる。
[工藤圭章]