改訂新版 世界大百科事典 「サラスワティー」の意味・わかりやすい解説
サラスワティー
Saraswatī
インドの現在の公用語であるヒンディー語による総合雑誌。1900年にアラーハーバードで創刊され,今日にいたる。誌名は学芸の女神サラスバティーの名に由来する。この雑誌は,20世紀初頭のヒンディー語界で,まだ実験段階にあった短編小説に発表の場を与えて育成した。さらに前代の文語ブラジュ・バーシャーに代わって共通ヒンディー語で詩作を行うことにも積極的な支援を送った。歴代の編集長にはシャームスンダルダース,マハービールプラサード・ドゥビベーディーなどがいたが,なかでも後者は1903年から20年まで在任し,この雑誌の編集を通じて文法的に安定し,論理的で明晰なヒンディー散文の確立に寄与した。この雑誌に寄稿するなかから,のちに国民的な詩人となったマイティリーシャラン・グプタ,進歩主義作家プレームチャンドなどが名編集長ドゥビベーディーの助言と添削を得てそれぞれの地歩を固めた。しかしながら《サラスワティー》誌は,今なお創刊以来のやや固い編集方法をとっているため,今日の大衆の関心をあまり集められなくなっている。
執筆者:坂田 貞二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報