日本大百科全書(ニッポニカ) 「サルマシウス」の意味・わかりやすい解説
サルマシウス
さるましうす
Claudius Salmasius
(1588―1653)
フランスの古典学者。パリ大学に学び、この時期にプロテスタントに改宗。1632年ライデン大学教授となる。ラテン、ギリシアの古典に精通し、ローマ法や軍制についての研究もある。ピューリタン革命によりオランダのハーグに亡命していたイギリス皇太子(王政復古後王位につきチャールズ2世となる)の頼みを受けて、ラテン語で「チャールズ1世のための王権の擁護」(1649年5月11日)を書く。この書は、1649年1月30日のチャールズ1世の処刑によりイギリスに出現した新共和国に反対して、全ヨーロッパの国王が統一を組み皇太子チャールズを正統の後継者として王位につけることを主張したもの。サルマシウスは、国王は神以外のだれにも裁かれないし、神以外のだれにも責任をもつものではないとし、国王を裁判し処刑したクロムウェル革命政権を非難した。これに対して、革命詩人ミルトンは、ラテン語の「イギリス人民弁護書」(1651年2月24日)を書き、国王処刑の正当性を擁護した。このサルマシウスとミルトンの国際的論争はサルマシウスの死とともに終結した。
[田中 浩]