王権(読み)おうけん(英語表記)kingship

翻訳|kingship

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

王権
おうけん
kingship

王という称号は,一般的には一の最高主権者を意味するものであるが,その内容は複雑で,総括的定義は困難である。イギリスの元首も,東洋の一小国の王も,部族の首長も,同じく王という名で呼ばれることがある。ローマの元首たちが権威の象徴として用いたインペラトル (皇帝の語源,最高の軍指揮官の意) の称号は,より優位の称号である「王」を避けた表現であったが,その支配権の普遍的性格において王を上回るものに変った。西ローマ帝国の末期,ゲルマンがローマに侵入すると,もともと部族の首長の権力にすぎなかったゲルマンの王権は,ローマの皇帝観念や,さらに古い時代のオリエントの神権政治にみられた宗教的要素を加味したものに変化していった。その後フランクの王カルル1世 (大帝) が戴冠した 800年の時点で,ゲルマンの王権は明らかにローマ的帝権の観念に同化したといえよう。カルル1世とその子孫の支配下に入ることのなかった地域の王たちさえも,皇帝の儀礼や装飾を用いてみずからの尊厳を主張するに急であった。中世ヨーロッパの政治理論は,教皇と皇帝を太陽と月,王たちをそれ以下の衛星に見立てたが,中世末期,封建社会の崩壊から近代市民社会の成立にいたる過渡期には,没落する封建的勢力と,上昇する市民階級の調停者としての王権は,無制限の絶大な権力を付与された (→絶対主義 ) 。市民革命による絶対王政の崩壊とともに,ヨーロッパでは王権がかつてもっていた政治的機能を大幅に失い,現在では,王の称号は,一国の主権者としての一個の独立した国際的地位を意味するものと受取られている。

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百科事典マイペディアの解説

王権【おうけん】

ある程度規模の大きな社会で,政治権力が一人の世襲制リーダーに集中し,継続的な行政司法制度とその執行機関とを有する場合,これを王権と呼ぶ。王権は政治的力だけでなく宗教的力も持つとされることが多い。こうした神聖王権における王は,作物や家畜など自然の豊饒を司り人間に秩序と安寧をもたらす一方,人間には制御困難な破壊的で危険な力を帯びているとされる。それゆえ王の身体に触れてはならないなどの禁忌がある。王の生命は共同体全体の運命と同一視されるので,老化したり病んだ王がそのまま死を迎える前に息の根を止め,元気な王を新たに即位させる〈王殺し〉の伝承も各地にある。フレーザーの《金枝篇》はその研究で有名。初代の王は共同体外部から来た〈異人〉であったという伝承を持つ王権も多く,王権はそれによって共同体内部の拮抗(きっこう)からの超越を主張するといえる。

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世界大百科事典内の王権の言及

【王】より

…また,《魏志倭人伝》にみえる邪馬台国の女王卑弥呼が,魏に使者を送り貢物を献じてその保護を求める〈外交〉を試みる一方,国内に対しては〈鬼道に仕えてよく衆を惑わす〉巫女として君臨するという二つの顔を持っていたのも,このことを示している。 共同体を支配し代表する資格を王に付与するのは王権である。王権は,共同体全体の意識と実際の政治社会を結合する。…

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