日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンキャクウオ」の意味・わかりやすい解説
サンキャクウオ
さんきゃくうお / 三脚魚
spider fish
硬骨魚綱ハダカイワシ目イトヒキイワシ科の海水魚の総称。とくにそのなかの1種イトヒキイワシBathypterois atricolorは世界中の深海に広く分布する種で、胸びれ、腹びれ、尾びれのそれぞれ数条が長く伸びるのでイトヒキイワシの和名がある。腹びれの最外鰭条(きじょう)が著しく長く伸び、それと尾びれ下葉先端を用いて海底に静止する姿からサンキャクウオともよばれている。海底で三脚のように立つ姿勢をとる生態は、深海潜水調査船で観察されている。体長15センチメートルに達し、体は延長して側扁(そくへん)。口は大きく、上顎(じょうがく)の後端は頬部(きょうぶ)中央に達する。背びれは体のほぼ中央にあり、尾柄(びへい)後端腹縁には欠刻がある。同属の種に、土佐(とさ)湾以南の深海からナガヅエエソB. guentheriが報告されている。この種は、体長26センチメートルに達し、体は延長して側扁するが、吻部(ふんぶ)が幅広くて縦扁する。
[上野輝彌]