改訂新版 世界大百科事典 「ザクロス」の意味・わかりやすい解説
ザクロス
Zákros
クレタ島東岸にあるミノス文明時代の宮殿址。カト・ザクロKáto Zákroともいう。新宮殿時代の初め,前1700年ころに建てられ,前1450年ころ火災によって滅んだ。規模はクレタ島の他の宮殿より小さいが,同じように中央中庭を取り囲む多くの部屋の集合体で,主要部は東翼と西翼とに分けられる。西翼は中庭に面して儀式の間,饗宴の間と呼ばれる広い部屋などが占め,儀式の間の床には赤色粘土がはめこまれていた。これらの背後に礼拝堂,神宝庫などの小室が続く。東翼では王の間と王妃の間が中庭に面し,それに接して大きな池を室内にもつ水槽の間があり注目される。水が豊かなことはこの宮殿の特色である。その他,調理室,食堂,工作場,倉庫もあり,宮殿に続く家々も発掘された。盗掘されなかったため,水晶製で金製の飾りをつけた角状杯,浮彫のある石製容器,優美な陶器類も多く発見され,イラクリオン博物館に一室があてられて展示されている。
執筆者:村田 数之亮
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報