日本大百科全書(ニッポニカ) 「シェヘラザード」の意味・わかりやすい解説
シェヘラザード
しぇへらざーど
Шехеразада/Sheherazada ロシア語
Schéhérazade フランス語
ロシアの作曲家リムスキー・コルサコフの交響組曲(作品35)。1888年ペテルブルグ初演。『千夜一夜物語』に基づいた4楽章構成で、通常、(1)海とシンドバッドの船、(2)カランダール王子の物語、(3)若き王子と王女、(4)バグダードの祭り―海―青銅の騎士のある岩にての難破―終曲、とよばれている。各楽章は二つの主題(残忍な王シャリアール、愛らしい王妃シェヘラザード)によって結び付けられ、終曲ではこの二つの主題が融合して作品に統一性と完結性をもたらしている。この作品が現代でも一般に広く親しまれている理由は、主として魅惑的なリズムと官能的な旋律にあると思われるが、それ以上に重要なことは、主題動機がたび重なる反復にもかかわらず、楽器編成を微妙に変化させることによってつねに新しく響いてくることであろう。この手法は後代の作曲家に大きな影響を与えた。なお、フランスの作曲家ラベルにも同名の管弦楽伴奏付き連作歌曲(1903)がある。
[三宅幸夫]