シチリアでの会話(読み)シチリアでのかいわ(英語表記)Conversazione in Sicilia

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シチリアでの会話」の意味・わかりやすい解説

シチリアでの会話
シチリアでのかいわ
Conversazione in Sicilia

イタリアの小説家エリオ・ビットリーニ長編小説。 1938年から 39年にかけて『レッテラトゥーラ』誌に連載。 41年に,まず『名前と涙』 Nome e lacrimeという表題で刊行され,次いでいまのように改められた。物語は久びさに故郷シチリアを旅する主人公の内的独白と現実世界とが交互に綾を織りなして展開する。随所にはめこまれた隠喩象徴とが,ファシズムと抵抗運動の時代の影を色濃く漂わせ,同じく 41年に発表された C.パベーゼの『故郷』とともに,ネオレアリズモ文学源泉となった。

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世界大百科事典(旧版)内のシチリアでの会話の言及

【ネオレアリズモ】より

…第1に,ネオレアリズモが〈責務の文学〉であること。第2に,思想的にも文学手法上も,パベーゼの長編小説《故郷》(1941)とビットリーニの同じく長編小説《シチリアでの会話》(1941)とを出発点にしていること。第3に,これら2作品が19世紀シチリアの小説家ベルガの文学を受け継ぎ,これを詩的散文に展開させたこと(したがって,ネオレアリズモは新しいイタリアのリアリズム(すなわち新しいベリズモ)を意味している)。…

【反ファシズム】より

… 1936年,スペイン内乱が勃発,ムッソリーニのフランコ側援助に対して,イタリア人の反ファシズム活動家4000人が共和国軍に身を投じた。ファシズムの何たるかをまぎれもなくみせたこのスペイン内乱のさなかにビットリーニは,《ソラーリア》の後継誌《レッテラトゥーラ》に《シチリアでの会話》を掲載,〈損われた世界〉を前に彷徨する〈私〉の苦悩を新しい文体で描き,パベーゼの《故郷》(1941)とともに(付け加えるならばモンターレの詩とともに),創作での最大限の抵抗を実現し,この2作はネオレアリズモの道標となった。パベーゼ,ビットリーニがともに翻訳・紹介に尽くしたアメリカ文学が,自由な創作の禁じられた30,40年代のイタリア文学に大きな活力を与えたことは注目される。…

【ビットリーニ】より

…36年にスペイン内戦が勃発すると,激しい衝撃を受けたビットリーニは,ファシズムのエチオピア侵略をテーマとした小説《エリカとその兄弟》(未完のまま1956年刊)の執筆を断念し,共和国派支持の活動を展開。他方で,スペインの教訓をイタリアに生かすべく,長編小説《シチリアでの会話》(1941)の創作にとりかかる。暗喩に満ちた前衛的手法によるこの作品は,ファシズム当局の弾圧に脅かされながらも地下での再版を繰り返して人々に読みつがれ,きたるべきレジスタンスの精神的基盤を形成するのに寄与した。…

※「シチリアでの会話」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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