劇のせりふの一種。モノローグともいう。人物が特定の相手に聞かせることを目的とせずに語るせりふ。舞台上に他の人物がいないときに語られる単なる独白と,他の人物がいるときに語られる傍白とに区別される。古典劇ではよく用いられ,シェークスピアやモリエールの劇には頻出する。しかし近代リアリズムの確立によってしだいに退けられるようになった。それは,人間が現実生活において長々とひとりごとを言うことは考えられず,したがって劇でもそういうことはあってはならないとされるからである。ことに傍白は,舞台上の他の人物に聞かれては困ることを,他の人物には聞こえていないという想定で述べるものであるから,はなはだ不自然であるとされた。しかしこれは,独白を人物の内面心理の表現とのみみなすからであって,独白を観客への語りかけと理解すれば問題は解決される。すなわち,人物は当のせりふをとくにだれにあててというのでもなく,またみずからに向かって語るのでもなくて,観客に対して劇の理解のために必要な情報を提供している。したがって,語り手は当の人物自身とは必ずしもいえなくなる。
このように考えれば,日本の能や歌舞伎のように語り物としての性格を強くもっている演劇のせりふも,一種の独白として理解できる。独白は劇と語り物としての文学との重要な接点なのであり,たとえば叙事演劇を提唱したブレヒトが,独白をしばしば用いているのは不思議ではない。また,チェーホフの《煙草の害について》のように独白だけで書かれた戯曲もある。
執筆者:喜志 哲雄
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…よく行われるせりふの形式上の一分類としては,2人あるいはそれ以上の登場人物の間で交わされる〈対話(ダイアローグdialogue)〉。登場人物が自分自身の考えや感情などをみずからに問いかける形をとる〈独白(モノローグmonologue)〉(モノローグ劇),対話中に対話の当の相手には聞こえないという約束で横を向き独りごとのように言う〈傍白(アサイドaside)〉などがある。【編集部】
[せりふの言語表現の特質]
せりふは,戯曲表現の唯一の直接的な実質であり,筋や役の性格を含めて,劇的な行動のいっさいがそれを通じて表現される。…
※「独白」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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