改訂新版 世界大百科事典 「シャーアッバース1世」の意味・わかりやすい解説
シャー・アッバース[1世]
Shāh `Abbās I
生没年:1571-1629
サファビー朝第5代の王で,同王朝中興の英主。在位1588-1629年。内政面では,カフカス地方出身のイスラム改宗者からなる奴隷軍kullar,小銃隊,砲兵隊(両者とも隊員は農民出身)など,王直属常備軍の創設,王領地の拡大,出自によらず本人の才能に基づく官吏任用など一連の改革を行って,クズルバシュの勢力を抑え,国王専制体制を築いた。対外的には,ウズベク,オスマン帝国を破って,版図をイスマーイール1世のそれに近づけ,ポルトガル勢力をガムルー(現,バンダル・アッバース),ホルムズ島から駆逐して,大いに国威を高めた。また,ヨーロッパ諸国と恒常的な外交・通商関係を開いた。産業,商業,貿易,とりわけ貿易の振興に意を用い,治安の確保,道路の建設・改良,架橋,隊商宿(キャラバンサライ)の建設に努めた。首都をカズビーンからイスファハーンに移し,幾多の壮麗なモスク,宮殿,庭園を造営した。
執筆者:羽田 亨一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報