改訂新版 世界大百科事典 「クズルバシュ」の意味・わかりやすい解説
クズルバシュ
Kızılbaş
イラン北西部の町アルダビールにあったサファビー神秘主義教団の長ハイダルḤaydar(イスマーイール1世の父,?-1488)が,同教団の門徒,とりわけアナトリア,シリアのトルクメン遊牧部族民を部族別に編制した戦士集団。教団長に無条件の忠誠を誓い,彼のために身を捨てて戦った。クズルバシュとは〈赤頭〉を意味するトルコ語で,これは彼らの着用した赤い帽子に由来する。ペルシア語ではキジルバーシュという。イスマーイール1世のサファビー朝創設を助け,その有力者たちは軍事的・政治的要職に任ぜられた。王朝成立後約1世紀間に9部族から16部族に増えたクズルバシュの部族長たちは,しだいに初心を忘れ,封建貴族化した。彼らは部族の武力を背景に互いに勢力を争い,国政を左右するようになった。シャー・アッバース1世は王直属軍の創設を含む軍制改革を行い,大部族を細分化して,彼らの勢力をそいだ。しかし,王朝末期には再び部族間抗争が激化し,サファビー朝崩壊の一因となった。
執筆者:羽田 亨一
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