改訂新版 世界大百科事典 「シャーセバーン族」の意味・わかりやすい解説
シャーセバーン族 (シャーセバーンぞく)
Shāhsevān
イラン北西部アゼルバイジャン地方に遊牧するトルコ系部族。人口約9万人。サファビー朝のシャー・アッバース1世(在位1588-1629)の創設した親衛軍の一部がこの部族の起源をなすといわれる。族名のもとの意味は〈シャーを愛する者〉である。部族集団として実体がはっきりし始めるのは18世紀前半のナーディル・シャーの時代からである。その遊牧地はカスピ海西岸に注ぐアラス(アラクス),クラ両川の下流域に広がるムガン平原を冬営地とし,そこから南へ150kmほど登ったサバラン山麓(標高2000~4000m)を夏営地としている。1828年のトルコマンチャーイ条約によってアラス川以北のムガン平原がロシアに割譲されたため,冬営地は以前より狭くなっている。この部族は1909年,タブリーズの立憲運動に対して反革命の役割を演じた。23年,レザー・ハーンの討伐をうけて武装を解除され,60年代の農地改革の進展で政治力を失った。
執筆者:坂本 勉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報