日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュテルンベルグ」の意味・わかりやすい解説
シュテルンベルグ
しゅてるんべるぐ
Лев Яковлевич Штернберг/Lev Yakovlevich Shternberg
(1861―1927)
ロシアの民族学者。ソ連時代に活躍。ペテルブルグ大学法学部などに在学中から革命運動に加わり、1886年逮捕され、1889~1897年の間、サハリンに流刑となり、この間、ギリヤーク(ニブヒ)をはじめ、ウイルタ、アイヌなどの民族の社会組織や宗教、言語の資料を収集し、研究を行った。途中、沿海州に渡り、アムール川流域の調査も行っている。ペテルブルグに戻ったのち、民族学・人類学博物館に勤め、1918年レニングラード大学教授となり、1924年ソビエト科学アカデミー通信会員となった。彼は、ギリヤークの社会組織に関し、婚姻の一般交換の資料を集め、「集団婚」の痕跡(こんせき)をみいだしている。またアイヌのイナウ(木幣)の起源が、神と人との媒介者で人のことばを神に伝えるものとの説を出し、シャーマニズムや双子崇拝、シベリア諸民族の世界観のうえで重要な位置を占めるワシの崇拝など、宗教の研究に関しても業績を残している。
[田村克己 2018年11月19日]