ウイルタ(読み)ういるた(英語表記)Ульта/Ul'ta ロシア語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウイルタ」の意味・わかりやすい解説

ウイルタ
ういるた
Ульта/Ul'ta ロシア語
Улыа/Ulïa ロシア語
Ороки/Oroki ロシア語
Uilta 英語

サハリンの北東部と南部に居住する少数民族で、自らをウイルタ氏族によってはウリチャと称する。ナニNani(「その土地の人々」という意味で他の民族も自称に用いる)ともよばれる。かつてオロッコとよばれたこともあったが、蔑称(べっしょう)であるため、現在は用いられない。1939年以来50年間人口統計に現れなかったが、89年の統計のときに179人が数えられている。アルタイ語族ツングース・満州(洲)語群南方ツングース語(満州語)系に属する。文化的にはアムール川流域の南方ツングース語系の諸民族と同類であり、また同じ樺太の少数民族ギリヤークの影響も強いが、トナカイ飼養を行う点で彼らと大きく異なる。生業は狩猟漁労とトナカイ飼養で、食糧、衣料はおもに狩猟漁労から得られ、トナカイは騎乗したり、そりにつないだりして交通手段に用いる。トナカイの放牧と猟場漁場の獲得のため1年の周期で移動生活を行うが、夏は海岸で漁労を中心としたなかば定住生活を送る。夏はカウラという大きな木造小屋に住むが、残りの季節はアウンダウという円錐(えんすい)形の住居に住む。ウイルタは父系外婚氏族を形成しており、各氏族ごとに居住範囲をもっていた。宗教は自然信仰シャマニズムシャーマニズム)、キリスト教の3宗教をもつが、アザラシクマに対しては特別の崇拝の念をもち、祭りを行った。ソ連時代には伝統生業もコルホーズ、ソフホーズ単位で行われたが、現在は協同組合や有限会社などに組織替えされている。トナカイ飼育は北部でわずかに残されているが、後継者不足と石油・天然ガス開発のために存続が危ぶまれている。日本では北海道各地に若干のウイルタ系の人々が生活している。

[佐々木史郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

放射冷却

地表面や大気層が熱を放射して冷却する現象。赤外放射による冷却。大気や地球の絶対温度は約 200~300Kの範囲内にあり,波長 3~100μm,最大強度の波長 10μmの放射線を出して冷却する。赤外放射...

放射冷却の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android