改訂新版 世界大百科事典 「シュルタ」の意味・わかりやすい解説
シュルタ
shurṭa
初期イスラム時代の警察,警官のこと。シュラタshuraṭa,あるいは複数形でシュラトshuraṭとも呼ばれる。語源は4型動詞ashraṭa〈的確な目的のために,ある事物を他と区別する〉にあり,転じてシュルタとは軍隊のエリート部隊を指すようになり,それが警察を示す用語に転化した。シュルタの起源については,正統カリフ時代,あるいはウマイヤ朝のムアーウィヤ1世時代の両説がある。城を守る衛兵や番兵のハラサḥarasaとは異なり,当時のシュルタはカリフや総督の親衛隊・治安部隊として敵対分子や不穏分子の摘発・鎮圧にあたった。アッバース朝やファーティマ朝におけるシュルタの長官ṣāḥib al-shurṭaの権限は大きく,しばしばカーディー(裁判官)のそれを凌駕するほどであった。後のウマイヤ朝では,官吏・将校用の大シュルタと一般市民用の小シュルタに分かれていた。アッバース朝では10世紀前半から,シュルタの代りにシフナshiḥnaの語が使われ始め,また地方ではマウーナma`ūnaとも呼ばれていた。
執筆者:花田 宇秋
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