日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジ・エイト」の意味・わかりやすい解説
ジ・エイト
じえいと
The Eight
20世紀初頭のアメリカにおける写実主義絵画運動。8名の画家が参加したところからこの名称があり、「アッシュ・キャン・スクール」(屑(くず)入れ派)ともよばれる。ヘンライを中心とするスローン、グラッケンズ、ラクス、シン(以上はフィラデルフィア出身)、デイビース、ローソン、プレンダーガストの8名は1908年2月、ニューヨークのマクベス画廊で第1回のグループ展を開いたが、これがジ・エイトの旗揚げとなった。彼らの目的は、サロン的なアカデミズムに支配された美術通念を告発することにあったから、当時の絵画では通常扱われることのない大都市の庶民の日常生活に焦点を絞り、率直な写実様式でそれを描いた。彼らの運動の意義は主題の選択の新しさにあり、絵画様式としての革新性はもっていないが、20世紀におけるアメリカン・リアリズムの展開に彼らが果たした役割は大きい。291ギャラリーに拠(よ)る前衛美術運動と並んで、20世紀アメリカ美術の出発を飾るものである。
[桑原住雄]