一般の民衆を指す。〈庶〉はもろもろの意で,衆庶,百姓(ひやくせい)も庶民と同義である。庶民は,市民や人民が歴史的規定のもとにみずからが政治性や階級性を意識している存在とは異なる。また,産業社会にあって非組織的な存在としての大衆や,民俗学で用いられる伝統的な生活様式,固有文化を保持する人びとを指す常民common peopleとも異なる。すなわち,〈庶民とは伝統的価値意識のなかに埋没している人びと〉(日高六郎)である。しかし,ときに,〈庶民感覚〉ということばに見られるように,知識人の言論や政治家の指導があまりに現実と乖離(かいり)しているときには,生活者という意味でそれを批判するものとしてあらわれる。身分,肩書,財産,政治的地位などにあまり縁がなく,ささやかな生活を営む人びと(庶民)であるがゆえに,現実的意味をもちうるのである。
執筆者:杉山 光信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…ただ,イギリスにおいては,かなり早くから下級貴族たる騎士身分が,軍役代納金制の普及や傭兵使用の開始により,戦士の機能を失って地主化の道を歩んだため,ジェントリーという独特な名望家階層が形成された。しかもこのジェントリーは,生業のうえでも,血縁関係からも,都市の市民と密接なつながりをもつようになったので,イギリス議会の下院はジェントリーと市民の代表を合わせた〈庶民Commons〉から構成され,このことは,フランスやドイツ諸邦などに比して,イギリスの身分制社会がかなり流動的な性格をもっていたことを示している。
[身分制と支配]
〈身分〉というものを,法制上の身分に限定せず,経済的見地より規定される〈階級〉と対置して広く考察するならば,身分制社会の特徴は,マルクス主義史家のいわゆる〈経済外強制〉のシステムに求められる。…
※「庶民」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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