ヘンライ(読み)へんらい(その他表記)Robert Henri

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘンライ」の意味・わかりやすい解説

ヘンライ
へんらい
Robert Henri
(1865―1929)

アメリカの画家シンシナティに生まれる。ペンシルベニア美術学校とパリエコール・デ・ボザールで学ぶ。19世紀末から20世紀初頭のアメリカのサロン的なアカデミズムを否定し、乗り越えるため、市民生活に密着した新しい写実絵画を提唱。1908年にはスローンJohn Sloan(1871―1951)、グラッケンズWilliam J. Glackens(1870―1938)ら8人でジ・エイト展を開いて意識革命を行い、20世紀初期のアメリカ画壇の指導的地位についた。ベラスケス、フランス・ハルス様式を折衷した人物画を中心に制作し、美術教育者としても精力的に活動したが、ヨーロッパモダニズムの衝撃を受けたあと、その影響力をしだいに失った。

桑原住雄

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

関連語 桑原

改訂新版 世界大百科事典 「ヘンライ」の意味・わかりやすい解説

ヘンライ
Robert Henri
生没年:1865-1929

20世紀初頭のアメリカ画壇で指導的な役割を演じた写実画家。シンシナティ生れ。ペンシルベニア美術アカデミーを出たあとパリのアカデミー・ジュリアン,エコール・デ・ボザールで学び,1891年帰国。ベラスケス,F.ハルスなどの様式を折衷した人物画を中心に制作し,反アカデミズムと反モダニズムの立場から1908年に〈ジ・エイトThe Eight〉展を組織して新しい写実を提唱した。美術教育者としても大きな足跡を残し,S.デービス,E.ホッパー,国吉康雄らを育てた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のヘンライの言及

【アメリカ美術】より

…世紀初頭には二つの革新運動がニューヨークに現れた。一つは1905年,写真家A.スティーグリッツによる〈291〉ギャラリー(ニューヨーク)の開設とそこを中心とした前衛美術の展開(マリンJohn Marin(1870‐1953),デミュスCharles Demuth(1883‐1935),G.オキーフ,ウェーバーMax Weber(1881‐1961)ら)であり,もう一つは08年以降のR.ヘンライを中心とする〈ジ・エイトThe Eight(8人組)〉グループの活動(スローンJohn Sloan(1871‐1951),ラクスGeorge Benjamin Luks(1867‐1933),デービスArthur Bowen Davies(1862‐1928)ら)である。前者は同時代パリのモダニズムを伝える窓口として,またアメリカの近代美術を育成する拠点として機能した。…

【ニューヨーク】より

… こうしたリアリズム文学(ないし自然主義文学)の興隆と軌を一にして,美術のほうでもニューヨークの市民生活をリアルな目でとらえた新しい画家のグループが出現している。1890年代にフィラデルフィアからニューヨークに移ってきたR.ヘンライを筆頭にするいわゆる〈アッシュ・キャン・スクール(ちり箱派)〉である。きれいごとしか描かないアカデミズムに反逆して,彼らはおもに市井の庶民生活をリアルに表現した。…

※「ヘンライ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

ユーラシア大陸、北アメリカ大陸北部に広く分布し、日本では北海道にエゾヒグマが生息する。成獣は体長2メートル以上、体重300キロにもなり、日本最大の陸生動物として知られる。雑食性で草や木の実、サケ、シ...

ヒグマの用語解説を読む