化学辞典 第2版 「ジチオン酸」の解説
ジチオン酸(塩)
ジチオンサン
dithionic acid(dithionate)
かつて二チオン酸といわれたこともある.酸:H2S2O6(162.14).純粋なものは得られていない.濃水溶液はジチオン酸バリウムBaS2O6・2H2Oの水溶液に硫酸を加え,沈殿を除いた液を濃縮すると得られる.かなり強い二塩基酸である.希薄水溶液は硫黄,弱い酸化剤,還元剤などとは反応しにくいが,Na-アマルガムでは還元され,MnO4-,Cr2O72-では酸化される.濃水溶液は,加熱すると50 ℃ 付近から分解がはじまり,SO2とSO42-になる.[CAS 14970-71-9] 塩:アルカリ金属,アルカリ土類金属および種々の重金属の塩が得られている.多くは水に可溶で,Ba塩も水に溶ける.MnO2を水に懸濁させ,これにSO2を通じると,
MnO2 + 2SO2 = MnS2O6
により,MnⅡの塩を得る.これにBa(OH)2を作用させてBa塩BaS2O6・2H2Oを得る.Ba塩と金属硫酸塩の複分解で種々の金属の塩が得られる.水溶液中で MnⅡ塩にNa2CO3を作用させると,Na塩の二水和物が得られる.Na2S2O6・2H2Oは,斜方晶系.密度2.18 g cm-3.[O3S-SO3]2- をもつイオン結晶で,S-S2.16 Å,S-O1.45 Å.∠S-S-O103°.結晶は空気中で安定である.加熱すると無水物となり,267 ℃ で分解してSO2とNa2SO4になる.水に可溶で,水溶液は煮沸しても分解しにくい.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報