一般には液体中の微小固体が液底に沈積すること。化学上は,溶液中で化学変化が起きて生じる生成物,または溶液が飽和に達することによって,その溶液中に溶解度以上に存在していた溶質が,細粒状または綿状,コロイド状の物質として現れる現象,また,このような変化を起こさせる操作,その際生じる固体状の物質(沈殿物precipitate)のことも沈殿という。沈殿をつくる目的は,物質の分離・精製,分析をすることなどで,その操作は化学実験の最も重要なものの一つである。溶液中にいくつかの成分が共存する場合に,それらのなかから特定の成分を固相として分離する場合には,試薬(沈殿剤)を添加して難溶性の化合物としたり,溶液の濃縮などが行われる。生じた沈殿を分離するには,デカンテーションdecantation(容器を傾けて上澄液を流し出す),ろ過,遠心分離などの方法が用いられる。溶液に目的成分以外のものを多量に含む場合や難溶性化合物を生ずる物質を共存する場合には沈殿に不純物が共沈,吸蔵して含まれることがある。
執筆者:橋谷 卓成
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
液体の中に存在している固体の粒子が液の底に沈積する現象。以前は「沈澱」と書いた。液底に沈積した固体は沈殿物、あるいは単に沈殿とよぶ。懸濁しているものまでを含めて沈殿ということもある。「澱」は「よどみ」とか「おり」という意味であり、植物の根や茎などを砕いて水に懸濁させ、繊維質を除いた液から沈殿した「おり」がデンプン(澱粉)である。
物質の分離や定量にはよく沈殿の生成が利用され、硫化水素法による沈殿の生成などは実に巧みな活用を行っている。重量分析のほとんどや容量分析の一部(沈殿滴定)、あるいは鏡検分析などに沈殿生成が利用されている。沈殿の生成には目的によって手法があるが、均一沈殿などもその一つである。
[山崎 昶]
液体中から固体が生成し,沈降し,底部に集まる現象.化学反応,温度変化,蒸発などの現象により,その温度での沈殿物の溶解度積に達した場合に起こる.沈殿操作は物質の分離,精製に利用され,化学分析,とくに重量分析や沈殿滴定に用いられる.さらに微量物質を多量の沈殿物と同時に沈殿させ,濃縮することはしばしば行われる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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