無水物(読み)ムスイブツ(その他表記)anhydride

翻訳|anhydride

デジタル大辞泉 「無水物」の意味・読み・例文・類語

むすい‐ぶつ【無水物】

無機化合物で、結晶水をもたない無水塩や、無水酸のこと。有機化合物では、酸無水物のこと。

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精選版 日本国語大辞典 「無水物」の意味・読み・例文・類語

むすい‐ぶつ【無水物】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 分子中から酸素水素が水の割合でとれてできる無機化合物二酸化硫黄酸化カルシウムなど。無水酸化物。〔英和和英地学字彙(1914)〕
  3. 二個のカルボキシル基の間から水がとれてできる有機化合物。
  4. 無水塩。
  5. 結晶から結晶水を除いたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「無水物」の意味・わかりやすい解説

無水物
むすいぶつ
anhydride

一般に無水塩、無水酸化物、酸無水物、塩基無水物などをいうが、もっとも普通には無水酸化物をいう。次のような場合がある。

(1)塩結晶の無水物 結晶が結晶水を含まない状態になった場合をいう。

(2)酸の無水物 酸の化学式から水1ないし2分子がとれた形の化合物で、たとえば二酸化炭素CO2、三酸化硫黄(いおう)SO3、三酸化二ヒ素As2O3、五酸化二リンP2O5などは、それぞれ炭酸H2CO3硫酸H2SO4、亜ヒ酸H3AsO3、リン酸H3PO4などの無水物である。

 このほか、有機酸の無水物、たとえば無水酢酸(CH3CO)2O、無水安息香酸(C6H5CO)2O、無水フタル酸C6H4(CO)2Oなどは酸無水物といっている。

(3)塩基の無水物 アルカリ金属、アルカリ土類金属などの酸化物で、たとえば酸化カルシウムCaOは塩基の水酸化カルシウムCa(OH)2の無水物である。

(4)液体の無水物 酢酸CH3COOHは常温無色の液体であるが、水とよく混ざり合う。そのため、とくに水を含まない、すなわち100%の酢酸の呼称が必要になるが、これは前記の無水酢酸と区別して氷(ひょう)酢酸といっている。またエタノールエチルアルコール)は水によく溶けるが、水と水素結合をつくって共沸混合物となり、通常の蒸留によっては完全に脱水することはできず、95%程度にしかならない。完全に脱水するためには生石灰を加えて脱水し、蒸留する。こうしてできたものは無水エタノールとよばれる。

[中原勝儼]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無水物」の意味・わかりやすい解説

無水物
むすいぶつ
anhydride

水を含まない化合物のことで,通常次のようなものをさす。 (1) 結晶水を含んで結晶している物質から,その結晶水を除いた化合物。無水硫酸ナトリウムなど。 (2) 水と反応して酸になる化合物。例として無水炭酸,無水硫酸,無水フタル酸のような酸無水物があげられる。無機の酸無水物は酸性酸化物といわれる。有機の酸無水物にはカルボン酸無水物やスルホン酸無水物がある。 (3) 水と反応して塩基となる化合物。たとえば酸化ナトリウムや酸化カルシウムのような塩基性酸化物がある。 (4) 無水アルコールや無水エーテルなどのように単に水分を含まないものも無水物という。

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