日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジャンガル」の意味・わかりやすい解説
ジャンガル
じゃんがる
モンゴルの英雄叙事詩。ジャンガルの名は標題Bogdo-Xan Janggar(聖明王ジャンガル)からきたもの。本来、口承文学として伝えられたものであるが、そのなかに描写されている生活、思想、風俗、社会制度などから推して15世紀初頭の作品とされる。1804年、ベルクマンによって最初に文字に書き取られた。15世紀初めの作品であるという推定から、チベット仏教(ラマ教)の信仰がモンゴル地方に伝わる以前に存在し、宗教、信仰とはいちおう無関係であると考えられ、『元朝秘史』に次ぐモンゴル研究の貴重な資料である。強い韻律と豊かな想像が展開され、多くの比喩(ひゆ)と誇張が用いられて、モンゴル人の芸術的才能が遺憾(いかん)なく発揮されている。
[荒井伸一]