日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ジョフロア・サンチレール
じょふろあさんちれーる
Étienne Geoffroy Saint-Hilaire
(1772―1844)
フランスの博物学者。最初僧侶(そうりょ)になる教育を受けたが、のちに博物学に転じ、パリの自然史博物館の教授となった。比較解剖学で優れた業績をあげた。器官および組織の相同関係を明らかにして、動物界には共通した「構造の単一のプラン」があると説き、この点について自らが自然史博物館に招いたキュビエと対立して1830年に有名な論争を行い、ドイツのゲーテはジョフロア・サンチレールに賛同した。ジョフロア・サンチレールはまた、前成説を否定する目的で奇形学の研究を始め、ニワトリ胚(はい)を用いて実験的奇形の創出を試みた。奇形学tératologieの語も彼が最初に用いたといわれ、また息子Isidore Geoffroy Saint-Hilaire(1805―1861)も父の後を継いで実験奇形学の興隆に貢献したことで知られる。主著に『解剖哲学』(1818~1820)がある。
[八杉貞雄]