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前成説 ぜんせいせつpreformation theory

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

前成説
ぜんせいせつ
preformation theory

個体発生において,成体のすべての構造や形態が,発生の初めにすでに決っていて,発生が進むにつれてそれが展開するという説。後成説対語。観念としては古くからあったが,顕微鏡の観察で,精子中に小人間が入っているなどと誤認されたため,17~18世紀の生物学者により強く主張され,極端な「いれこ説」,すなわち卵の中に子孫の雛型があるという卵子論者と精子の中に雛型があるとする精子論者とに分れた。発生学の進展に伴い否定され,19世紀に入ってから後成説が認められるようになったが,前成説的思想は遺伝の情報の引継ぎという別の形で残されている。

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デジタル大辞泉の解説

ぜんせい‐せつ【前成説】

生物の個体の形は卵または精子の中にすでにでき上がっていて、それが発生とともに展開するという考え。自然発生説と結びついて19世紀初めまでは有力な学説であった。→後成説(こうせいせつ)

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百科事典マイペディアの解説

前成説【ぜんせいせつ】

生物の発生過程において,すべての形態,構造があらかじめ決定されて卵あるいは精子の内に畳みこまれており,それが繰り広げられる形で個体が完成するという考え方。原型が卵と精子のいずれにあるとするかによって卵原説と精原説があった。
→関連項目ウォルフスパランツァーニ

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世界大百科事典 第2版の解説

ぜんせいせつ【前成説 preformation theory】

生物の個体発生にさいし,成体の原型が卵・精子または受精卵にあらかじめできあがっているとする説。この説によれば,発生過程の基本は,成体の微小な原型が成長していく変化にすぎない。17世紀になって顕微鏡観察がはじまり,それまでは頭部と心臓しか出現していないと思われていた時期に,胚体の諸部分がすでに形成されている事実が,M.マルピーギによって発見された(1672)。またJ.スワンメルダムは,さなぎのなかに成体が折りたたまれて入っていることを明らかにした(1669)。

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大辞林 第三版の解説

ぜんせいせつ【前成説】

生物の個体がもつ構造や形態は、あらかじめなんらかの状態で準備されており、発生の過程でそれが成長するという説。一九世紀以後、衰退したが、前成説的な考え方は現在も存在する。 → 後成説

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

前成説
ぜんせいせつ

生物発生学の用語で、後成説に対立する。個体発生において、受精卵中に成体の諸器官が縮小された形で備わっていて、それが発生とともに展開してくるという考え方をいう。19世紀後半からの顕微鏡の発達によって、それまで無構造であると考えられていた初期胚(はい)に種々の構造が認められるようになって、前成説は強く主張された。おもな前成説論者はマルピーギ、スワンメルダム、ボネなどである。前成説のなかでは、子孫の世代の成体まで精子中に次々に入れ子になって存在するという精原説と、卵子内にあるという卵原説が対立していたが、卵胞の発見や単為生殖の発見によって卵原説が有利になった。しかし18世紀中葉から19世紀前半にかけて、発生学の研究が進歩をとげ、胚葉の発見など後成説に有利な観察や実験が数多くなされて、前成説はしだいに消滅していった。[八杉貞雄]

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世界大百科事典内の前成説の言及

【ウォルフ】より

…動物の発生に関する研究で知られる。主著《発生論Theoria generationis》(1759)では,当時支配的であった前成説(生物個体の発生は,先在する構造の展開とする説)に反対し,後成説(発生の過程で,順次に各器官が形成されるとする説)を主張した。そのため,前成説を支持していたA.vonハラーやC.ボネと対立し,1767年にロシアのペテルブルグ学士院の招きに応じて移り,解剖学の教授になった。…

【発生学】より


[発生学の学説]
 生物の発生という現象を説明するために,遺伝学におけるメンデル法則にあたる普遍的原理は今のところない。生物の発生の説明には古くから二つの異なる基本的な立場があって,これらを前成説後成説と呼ぶ。 前成説とは,発生において,将来完成される生物の姿がなんらかの様式でごく初めからあらかじめ存在している,と考えるのである。…

※「前成説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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