改訂新版 世界大百科事典 「スイツキコウモリ」の意味・わかりやすい解説
スイツキコウモリ (吸付蝙蝠)
disc-winged bat
前・後足に吸盤がある虫食性コウモリの総称。翼手目スイツキコウモリ科Thyropteridaeに属する哺乳類。ホンジュラススイツキコウモリThyroptera disciferaとスピックススイツキコウモリT.tricolorの2種がある。新世界特産で,メキシコ南部からブラジル東部までとトリニダード島に分布し,熱帯雨林に生息する。前腕長2.5~4.0cm,頭胴長3.5~5.2cm,尾長2.5~3.3cm。マダガスカル島のサラモチコウモリに似て,前足の親指の基部と後足の下面に円盤状の吸盤があり,滑らかな葉の表面に止まることができる。左右の耳介は離れ,耳珠をもつが鼻葉を欠く。体の背面は赤褐色,腹面は白色を帯びる。前足の親指のつめはサラモチコウモリでは痕跡的であるが,この類では太くてがんじょうである。バナナなどの漏斗状に巻いた葉をねぐらとし,単独または小さな群れでいる。多くの虫食性コウモリと異なり,頭を上にしてねぐらに止まる。5月ころ1子を生み,母親は子を胸に抱いたまま採食行動をする。主食はハエなどの昆虫。
執筆者:吉行 瑞子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報