動物が他の動物や物体に吸着するための構造。吸虫類では口の周囲,腹面などにみられるが,位置や数には変異がある。ヒル類では体の前後端に,頭足類では触手上にある。いずれも吸盤の縁を対象物に強く押しあて,筋肉を収縮させて吸盤内部の容積を拡張し,含まれている空気を外圧に対して負圧とすることにより,強い密着力を生じさせる。両生類のアマガエルでは指端にあり,その掌面は多数の独立した上皮細胞からなる。個々の細胞の表面は扁平で,対象物に吸着する際には細胞間の小孔から粘液,またはリンパ液を出し,この液体を媒体として扁平な細胞表面と,対象面の間に生じる表面張力を利用している。したがって洗剤などのついた面では滑り落ちてしまう。爬虫類のヤモリでも指の掌面にあり,多数の横ひだからなる。横ひだを構成する剛毛は,非常に細く長く,対象物の表面にある微小な凹凸によく適合して吸着力を生じさせる。
執筆者:松井 正文
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動物が他の動物や物体に吸着するための器官をいう。柔らかく盛り上がった周縁に囲まれた中に空所をもち、これを他物に強く押し付け、次に周囲の筋肉を収縮させて内部を陰圧にして吸着する。その形や数、また吸着の目的は動物の種類によってさまざまである。ジストマなど内部寄生をする吸虫類では口と腹部に吸盤があり、宿主から排出されないように腸その他の器官に吸着する。ヒル類では体の前後両端にあり、他物に交互にくっつけたり放したりして移動するが、さらに前吸盤は吸血の役目を果たす。イカ、タコなどの頭足類の吸盤は触手上に一定の配列を示し、食物をとるために利用している。昆虫ではゲンゴロウ類の雄の前肢最終肢節(跗節(ふせつ))に、交尾時に雌を抱くための吸盤がある。脊椎(せきつい)動物ではコバンイタダキの頭部背面に小判形の吸盤があり、サメその他の大形魚の腹面にくっつき移動する。アマガエルでは指先に、ヤモリでは指の掌面に吸盤があり、樹木や壁を簡単に移動する。
[内堀雅行]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…表面に縦,横,または格子状の〈しぼ〉のある織物。本来はシアサッカーseersuckerといい,〈ミルクと砂糖〉を意味するペルシア語のshīr va shakkarに由来する。もともとインドで作られ,亜麻や木綿であったが,現在は絹やレーヨンでも作られる。〈しぼ〉は張力の異なる糸を経,緯に用いて凹凸を作るが,苛性ソーダなどを用いた薬品処理を行うこともある。一般に薄手で,〈しぼ〉のさらりとした触感から夏物衣料に用いられる。…
…それ以外のイカ類ではふだんは縮められているが,ポケットにたたみこまれることはない。触腕は柄部stalkと掌部clubからなり,掌部には通常2~4列,種によっては8~16列あるいは20列以上もの吸盤があり,その角質環の歯の大きさや並び方は通常腕のそれと異なっている。また,吸盤のうち1~2列のものが鉤(かぎ)に変形している例もまれではない。…
※「吸盤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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