日本大百科全書(ニッポニカ) 「スコウ」の意味・わかりやすい解説
スコウ
すこう
Jens C. Skou
(1918―2018)
デンマークの生化学者。デンマーク西部のレンビグの裕福な家庭に生まれる。1937年、医師を目ざしてコペンハーゲン大学医学部に入学。1944年卒業後、インターンとして臨床経験を積む。この時期に局所麻酔の作用に興味をもち学位論文のテーマに決める。1947年オーフス大学で研究を進めるとともに助教授を務め、1954年医学博士を取得、同年よりオーフス大学生理学準教授。細胞内外のイオン濃度勾配の維持に関わるナトリウム‐カリウムポンプを同定したことを機に、研究対象を局所麻酔からイオンの能動輸送へと移す。1963年同大学教授となる。
1957年に細胞膜を通して膜内外に直接イオン分子を輸送する酵素「Na+・K+-ATP(アデノシン三リン酸)分解酵素」を発見した。このATP分解酵素は、ATPを分解するときに、生体内で使うエネルギーを取り出すことができ、このエネルギーを使って濃度勾配に逆らってイオンを汲みだすポンプが動いていることが明らかになった。これらの業績により1997年のノーベル化学賞を受賞した。ATP分解酵素の機能メカニズムを明らかにしたP・ボイヤー、酵素の構造を明らかにしたJ・ウォーカーとの同時受賞である。
[馬場錬成 2018年8月21日]