化学辞典 第2版 「スタンナン」の解説
スタンナン
スタンナン
stannane
SnnH2n+2で示される一連のスズの水素化物.n ≧ 2のものは不安定で,普通はn = 1のSnH4をさす.Hを炭化水素基,ハロゲンなどで置換したものの総称として使われることもある.IUPAC命名法(2005年)では,置換命名法で使われるSnの母体水素化物名,および数詞を付けて複核以上の水素化物名をつくるときの語幹(たとえば,テトラメチルスタンナン(CH3)4Sn,ジスタンナンなど).【Ⅰ】SnH4(122.74).低温でエーテル中でLiAlH4にSnCl4を作用させるか,SnCl2水溶液にKBH4,ついでHClを作用させると得られる.無色,毒性のある気体.Sn中心の正四面体型構造で,Sn-H1.71 Å.融点-150 ℃,沸点-52 ℃.水に不溶.希アルカリ,希酸にも安定であるが,2.5 mol dm-3 以上のNaOH水溶液や濃い酸とは反応する.室温でも徐々に分解するが,150 ℃ 以上では分解が速く進み,Snが単離してスズ鏡をつくる.強い還元剤で,有機化合物を還元する.たとえば,
C6H5CHO → C6H5CH2OH
C6H5NO2 → C6H5NH2
触媒の存在下でオレフィンと作用してアルキルスタンナンとなる.ジスタンナンSn2H6(243.47)は不安定で,室温でも分解する.[CAS 2406-52-2:SnH4][CAS 32745-15-6:Sn2H6]【Ⅱ】アルキル,およびアリール誘導体の総称.多くのものが得られているが,一般にもとの水素化物より安定である.テトラメチルスタンナン(CH3)4Sn(178.85)は,ジブチルエーテル中でSnCl4とCH3MgIの反応(グリニャール反応)で得られる.無色の液体.沸点76.8 ℃.密度1.29 g cm-3.水に不溶,有機溶媒に可溶.Br2 と作用して(CH3)3BrSnになる.テトラフェニルスタンナン(C6H5)4Sn(427.13)は,同様にSnCl4とフェニルグリニャール試薬の反応で得られる.無色の結晶.融点229 ℃.ハロゲンと反応して(C6H5)4SnX2を,計算量のSnCl4と反応して(C6H5)3ClSnを生じる.[CAS 594-27-4:(CH3)4Sn][CAS 1066-44-0:(CH3)3BrSn][CAS 595-90-4:(C6H5)4Sn][CAS 639-58-7:(C6H5)3ClSn]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報