日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリニャール反応」の意味・わかりやすい解説
グリニャール反応
ぐりにゃーるはんのう
Grignard reaction
グリニャール試薬RMgXと種々の有機化合物との反応の総称。有機合成において重要な反応である。フランスのグリニャールは、リヨン大学のバルビエPhillipe Antoine Barbier(1848―1922)の指導の下に、マグネシウムを用いる縮合反応を研究し、1901年広範な有機合成への応用を発表した。グリニャール反応に使うグリニャール試薬は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を溶媒として、有機ハロゲン化物RXにマグネシウムMgを反応させて調製して、できたグリニャール試薬RMgXを単離せずに、溶液をそのまま反応に用いる。グリニャール試薬の調製に使える有機ハロゲン化物RXは、ハロゲンXが塩素Cl、臭素Br、ヨウ素Iの場合で、有機フッ素化合物RFはグリニャール試薬を生成しない。
グリニャール試薬は、次の(1)~(6)のような広い範囲の有機合成反応に応用されている。
(1)グリニャール試薬はアルコール、水などから活性水素を奪って炭化水素を形成する。
(2)カルボニル基に対してはアルキル基の付加がおこり、ケトン、エステル、酸ハロゲン化物、酸無水物から第三アルコールを生じ、アルデヒドから第二アルコールを生ずる。この反応はアルコール類の合成法として重要なものである。
(3)酸アミド、ニトリルからケチミンを生じ、ケトンを得ることができる。
(4)二酸化炭素に作用させるとカルボン酸を生成する。
(5)ハロゲン化アルキルとはハロゲンを置換して炭化水素を生ずる。
(6)他の金属塩との反応は、有機金属化合物の合成法として用いられる。
RMgX+HgX2―→RHgX+MgX2
グリニャール反応は高温でおこりやすい。グリニャール試薬溶液は通常ハロゲン化アルキルが残存するので、残っているハロゲン化アルキルとできたグリニャール試薬が反応してしまわないように一般になるべく低温で行うのが望ましい( )。
[湯川泰秀・廣田 穰]