改訂新版 世界大百科事典 「スピラン」の意味・わかりやすい解説
スピラン
spirane
2個の環を有する有機化合物で,1個の原子のみが2個の環に共有されている構造をもつものの総称。スピロ化合物spiro-compoundともいう。名はラテン語のspira(らせん)に由来する。共有されている原子(スピロ原子という)は,炭素原子である場合が最も普通である。炭素原子の4個の結合の方向は正四面体型であるので,スピランの二つの環は互いに直交した空間配置を占める。二つの環が同一平面上にないため,適当な位置に置換基を有する場合には分子不斉が生じ,互いに空間的に重ね合わすことのできない1対の対掌体が存在し,これらは光学活性体に分割できる。最も簡単なスピランは,スピロペンタンであり,1,1-ジ(ブロムメチル)シクロプロパンを亜鉛で脱ブロムすることにより得られる。
スピランの命名法では,骨格全体の原子数に相当する炭化水素名に,二つの環のそれぞれの構成原子数より1(中心原子分に相当)を減じた数を接頭語的に加えて,たとえば,スピロ[4.5]デカンのように命名する。
執筆者:村井 真二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報