日本大百科全書(ニッポニカ) 「スピロ化合物」の意味・わかりやすい解説
スピロ化合物
すぴろかごうぶつ
spiro-compound
2個の環が1個の原子(sp3混成原子)を共有して結び付いている脂環式化合物の総称。スピランspiraneともいう。炭素環をもつもの、複素環をもつものがある。二つの環に共有されている原子はスピロ原子(スピロは螺旋(らせん)状を意味するギリシア語に由来する)とよばれ、炭素、ケイ素、アンモニウム塩の窒素などの例が知られている。二つの環は同一平面上にはなく、互いに直交しているために光学異性体が存在する場合がある。
スピロ化合物は次の2通りの方法のどちらかにより命名される。最初のスピロ[3.4]オクタン( の(1))の名前は、全体の炭素原子数が8だからオクタンで、中心のスピロ炭素原子に炭素3個の鎖-(CH2)3-の両端と炭素4個の鎖-(CH2)4-の両端が結合し橋架けしてスピロ環をなしていることを表している。2番目のスピロ[1H-インデン-1,3'-ピロリジン]( の(2))は1H-インデンの1の位置とピロリジンの3の位置の炭素原子が共有されてスピロ結合している化合物であることを表している。この場合には、両方の環の原子を区別するために、後にくる化合物(この場合ピロリジン)の番号にプライム(')をつけて命名する。
[向井利夫・廣田 穰]