翻訳|cyclopropane
サイクロプロペインともいう。3員環の炭化水素。常温で無色の気体。融点-127.53℃,沸点-32.7℃。代表的な合成法としては,(1)アルコール中で1,3-ジブロモプロパンに亜鉛を作用させて作る方法と,(2)亜鉛-銅カップルの存在下に,エーテル中でアルケンとジヨードメタンとを反応させて作る方法があり,後者はとくにシクロプロパン誘導体の合成に適している。
構造は図に示すとおりで,C-C-Cの結合角60度は正四面体角109.5度にくらべて著しく小さいため,環にはひずみがかかっている。その結果シクロプロパン環は開裂しやすく,またエチレン結合に似た性質を示す。たとえば,エチレン結合に付加する試薬である硫酸,臭化水素,臭素と反応して,それぞれ硫酸水素プロピル,1-ブロモプロパン,1,3-ジブロモプロパンを生成する。
また,白金触媒存在下で容易に水素と反応してプロパンとなる。エチレンとちがって過マンガン酸カリウムに対しては安定である。吸入麻酔薬(シクロプロパン15~40%+酸素85~60%)として一時賞用されたが,引火・爆発性があり,現在ほとんど用いられない。
執筆者:小川 桂一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
シクロアルカンの一つ。トリメチレンともいう。無色の可燃性気体。酸素と爆鳴気をつくる。合成は1,3-ジクロロプロパンと亜鉛のウルツ反応によるか、エチレンへのカルベン付加反応(シモンズ‐スミス反応)による( )。シクロプロパンは炭素結合角のひずみが大きく、そのため3員環を構成している炭素‐炭素結合(C-C)は折れ曲がった結合(バナナ結合)である。開環のとき、ひずみのエネルギーを放出するので、他のシクロアルカンよりはるかに反応性に富んでいる。ニッケル触媒上、120℃で水素化され、プロパンを与える。ルイス酸触媒下では臭素と反応して1,3-ジブロモプロパンを、また、水が付加して1-プロパノールを生成する。酸素との混合体は吸入麻酔剤として用いられる。
[向井利夫]
シクロプロパン
分子式 C3H6
分子量 42.1
融点 -127.53℃
沸点 -32.7℃
屈折率 (n)1.3799
C3H6(42.08).1,3-ジブロモプロパンを金属ナトリウムと処理すると得られる.無色の気体.融点-126.6 ℃,沸点-34 ℃.燃焼熱2091 kJ mol-1.ニッケル上で120 ℃ で還元するとプロパンになる.引火性,爆発性があり,また吸入麻酔薬に使われる.[CAS 75-19-4]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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