日本大百科全書(ニッポニカ) 「シクロプロパン」の意味・わかりやすい解説
シクロプロパン
しくろぷろぱん
cyclopropane
シクロアルカンの一つ。トリメチレンともいう。無色の可燃性気体。酸素と爆鳴気をつくる。合成は1,3-ジクロロプロパンと亜鉛のウルツ反応によるか、エチレンへのカルベン付加反応(シモンズ‐スミス反応)による( )。シクロプロパンは炭素結合角のひずみが大きく、そのため3員環を構成している炭素‐炭素結合(C-C)は折れ曲がった結合(バナナ結合)である。開環のとき、ひずみのエネルギーを放出するので、他のシクロアルカンよりはるかに反応性に富んでいる。ニッケル触媒上、120℃で水素化され、プロパンを与える。ルイス酸触媒下では臭素と反応して1,3-ジブロモプロパンを、また、水が付加して1-プロパノールを生成する。酸素との混合体は吸入麻酔剤として用いられる。
[向井利夫]