改訂新版 世界大百科事典 「スペースチャーター」の意味・わかりやすい解説
スペース・チャーター
space-charter
日本の海運会社で採用している運航協力体制の一つ。1960年代の後半から急速に国際定期航路に広まった貨物輸送のコンテナー化は,コンテナー専用船に対する投資ばかりでなく,港湾埠頭ターミナルの専用化をも船会社にもたらすことになった。このため,コンテナー輸送市場に参加するには巨額の投資を必要とし,世界のほとんどの定期船会社は従来のような1社単独による航路経営を不可能にされた。そこで,これら定期船会社は資本や業務上の提携を通じて互いに協力し合うことで資本負担の軽減をはかり,コンテナー市場への進出を実現した。この場合の協力体制の一つとして,日本の海運会社を中心として日本関係航路に採用されたのがスペース・チャーター方式である。この方式は,グループを構成する各船会社がその所有・運航するコンテナー船について相互に同数のスペースを交換し合うことによって,他社の運航するコンテナー船にも船腹スペースを有し,このスペースについてあたかも自社船のように荷主と運送契約ができるようにしたものである。また,グループ内では配船調整やターミナルの共同使用も行われる。この方式による船会社間の協力は主として船腹とターミナルの利用に限られ,まったく同一の輸送サービスについてグループを形成する船会社間に集貨競争が展開される。コンテナー輸送市場に観察されるこのほかの船会社間の協調体制に,単一の共同運航会社を設立するコンソーシアム方式がある。
執筆者:織田 政夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報