スレオニン発酵(読み)スレオニンはっこう(英語表記)threonine fermentation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スレオニン発酵」の意味・わかりやすい解説

スレオニン発酵
スレオニンはっこう
threonine fermentation

必須アミノ酸の一つであるL-スレオニンを微生物を用いて生産する方法。スレオニンは不斉炭素を2つもつので,有機化学的に合成すると4種の異性体の混合物が得られ,活性型であるL-スレオ型スレオニンだけを分離することはかなり困難であるが,微生物はL-スレオ型スレオニンのみを合成するので微生物利用の発酵法が有利である。発酵はおもに細菌を用いて行われるが,スレオニンがさらに代謝されてイソロイシンを生合成する系を遮断したイソロイシン要求変異株を,イソロイシンの制限量存在下に,スレオニンの前駆物質であるL-ホモセリンを添加して培養することによって高いスレオニン収量が得られている。ほかに,スレオニン生合成経路と関連したアミノ酸であるメチオニンリジンの前駆体であるジアミノピメリン酸,メチオニンおよびジアミノピメリン酸,メチオニンおよびバリンを,成育に必要とする変異株を用いることによって,糖質からの代謝の流れをスレオニン蓄積に向ける手法もとられている。また,スレオニンの構造類似化合物である α -アミノ-β-ヒドロキシ吉草酸に抵抗性のある変異株を用いる方法もある。

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