日本大百科全書(ニッポニカ) 「バリン」の意味・わかりやすい解説
バリン
ばりん
valine
α(アルファ)-アミノ酸の一つ。略号はValまたはV。1906年E・H・フィッシャーが構造を決めた。α-アミノイソバレリアン酸(吉草酸(きっそうさん))α-Aminoisovaleriansäureであるところから命名された。L-バリンはタンパク質を構成するアミノ酸の一つで、多くのタンパク質中に少量ずつ含まれ、もやしには遊離状で存在する。D-バリンは抗生物質バリノマイシンの構成アミノ酸として含まれる。細菌ではα-ケトイソバレリアン酸と分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(トランスアミナーゼ)によって相互変換する。分子量117.15。水に溶けやすく、冷たいアルコールには溶けない。
[降旗千恵]
栄養
タンパク質構成アミノ酸の一つ。栄養上、必須アミノ酸(ひっすあみのさん)の一種であるが、食品中に広く分布するため、欠乏することはない。バリンはその脱アミノ化合物であるα-ケトイソ吉草酸からできる。α-ケトイソ吉草酸はロイシンやパントテン酸のパント酸部分の前駆体でもある。天然のL-バリンは甘味以外に苦味があるが、合成のD-バリンは甘味が強い。バリンはロイシン、イソロイシンとともに化学構造から分枝アミノ酸とよばれる。
[宮崎基嘉]